内容説明
身のまわりの品をバッグにつめこみながら、サブレの目から熱い涙がこぼれ落ちた。自分で決めたこととはいえ、いざ家族を、しかも病気の父親を置いて出ていくと思うと、やはり心が痛む。でも、ニューオーリンズへ行って、これまでまったく音信のとだえていた祖父に会い、莫大な遺産の相続人として認められれば、この貧しい生活から抜けだせるのだ。父にちゃんとした治療を受けさせたり、弟を大学に行かせられるわ。それに、ケニヨンが一緒についてきてくれるし…。相続の話を伝えにやってきた弁護士、ケニヨンに対して、サブレは頼もしさと同時に、淡い恋心を抱いていた。