内容説明
彼女のプロダクションが借りているスタジオのセットで、俳優たちに演技をつけている男を目にした瞬間、イライザ・ロスカートは時がその歩みを停止したように思った。その男は、間違いなくダリオ・ナポリだ。ダリオ・ナポリといえば世間では、天才的映画監督と呼ばれている。だが、イライザにとってダリオは、たった1週間だけだが、夫と呼んだ人だった。15年も昔のことだ。今、ダリオは白髪が混じり、イライザが想像していたより老けたようだ。彼が、イライザの主宰するプロダクションが制作中の昼のテレビドラマの演出をするなど、わけがわからない。15年前の破局にしても、ダリオの裏切りだけが原因だった。