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内容説明
古びたトロール船が一隻出ているだけのスペリオル湖岸。よろよろと歩いていた老人が餌小屋の羽目板に寄りかかる。丘の上のカフェから眺めていたハンナは、たまらず駆けつけた。あのまま一人でほうっておいたら湖に落ちてしまう。ハンナがいくら説得しても、老人は動かない。船がなくなって悲しいと嘆くばかりだ。「彼を家まで送ってもらえないかしら?」思いあまったハンナは、旧式のエンジンと格闘しているトロール船の男に声をかけた。がっしりした体格の男は舌打ちして振り返った。一瞬、ハンナはどぎまぎしてしまった。厳しい、何かに飢えたような表情。腕の黒い入れ墨と袖なしの黒のシャツが調和している。「いいか、よく聞け。おれには関係ないことだ」にらみつける彼の視線を、ハンナは正面から受け止めようとした。