内容説明
戦争が激しくなり、もっと激しくなるだろうと誰でもが想像したその秋の終わり、中保哲也と三上岸子は正式の結婚式を行った。2人にとってこの形式的な神官立ち会いの儀式は非常に重大な事であった。なぜなら、動乱の世相ともいうべき戦う国に在って、個人の幸福は誰にも保証される所がなかったので、2人は身を焦がす青春の葛藤はもう沢山であった。戦争の不安の上に、更に感情生活を動揺の中に置く必要は微塵もなかった。欲しいのは、せめてもの平凡な幸福への憧れであった。第1回水上滝太郎賞受賞作。
戦争が激しくなり、もっと激しくなるだろうと誰でもが想像したその秋の終わり、中保哲也と三上岸子は正式の結婚式を行った。2人にとってこの形式的な神官立ち会いの儀式は非常に重大な事であった。なぜなら、動乱の世相ともいうべき戦う国に在って、個人の幸福は誰にも保証される所がなかったので、2人は身を焦がす青春の葛藤はもう沢山であった。戦争の不安の上に、更に感情生活を動揺の中に置く必要は微塵もなかった。欲しいのは、せめてもの平凡な幸福への憧れであった。第1回水上滝太郎賞受賞作。