内容説明
「日本思想史」「韓国思想史」における李退渓評価は、戦前の帝国的学知からいまだ解放されていない!“東方の小朱子”と称される李朝の代表的文臣・李退渓(イテゲェ・1501‐70)の学説は、「主理」派の哲学として朝鮮儒学の最高峰とされ、林羅山や山崎闇斎ら近世日本朱子学にも大きな影響を与えた―しかし、こうした定説は植民地時代の京城帝国大学教授・高橋亨と阿部吉雄らによって創られた虚構であった。李退渓のテキストを丹念に読み解き、帝国的学知の残滓を払拭して退渓の思想を独自の「心学」と捉え、東アジア思想史の課題として共有することを唱えた著者畢生の研究が本書である。
目次
第1章 李退渓の生涯とテキスト(李退渓の生涯;李退渓が出会ったテキスト)
第2章 神格化された李退渓(二つの神話;第一の神話―高橋亨 ほか)
第3章 李退渓の哲学(理の動静;天と心 ほか)
第4章 李退渓の政治学(郷約;「帝王の学」 ほか)
第5章 「李退渓心学」の特徴(『聖学十図』第八心学図;「李退渓心学」とは ほか)
終章(生き続ける李退渓神話;「民国」と「日用応接の間」)
著者等紹介
井上厚史[イノウエアツシ]
1958年広島県生まれ。同志社大学文学部卒業。大阪大学大学院文学研究科日本学専攻博士後期課程満期退学。元島根県立大学地域政策学部教授。2022年逝去。専攻―東アジア思想史・日韓関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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