内容説明
防災をめぐる喫緊の課題は、住民の「主体性の回復」と「依存意識の払拭」である。本書ではこれらの課題の解決に必要な視座を徹底的に考察する。本書で一貫して重視するのは、防災に関する社会一般の「通念(思いこみ)」をそのまま過信したり鵜呑みにしたりすることを避け、それらを「懐疑(問い)」のまなざしで突き詰めてみるというスタンスである。その先に見えてくるものは、「人が死なない防災」の実現のために必要な、防災をめぐる行政と住民のコミュニケーションのあるべき姿である。著者は、防災行政に携わる者、地域住民など、そのすべての人たちが頑なであってはならないと説く。頑なであればあるほど、主体性はなくなっていき、自己保身や責任追及に走りがちとなり、「遠くにある一般的な形式をとる何か」に依存しがちになってしまう。そこからの脱却を図るため、防災をめぐる行政と住民の関係構造について、それぞれの立場からパラダイム・チェンジを引き起こす努力がいま、求められている。
目次
第1章 防災探究の準備―災害社会工学の視座
第2章 「津波てんでんこ」で命を救えるか?
第3章 過去の災害を忘れないでいられるか?
第4章 詳細情報と曖昧情報
第5章 避難情報廃止論
第6章 「高い災害意識」は必要か?
第7章 防災の責任の所在
第8章 主体的な防災をめぐる住民と専門家のコミュニケーション
著者等紹介
及川康[オイカワヤスシ]
東洋大学理工学部都市環境デザイン学科教授。1973年北海道函館市生まれ。群馬大学工学部建設工学科卒業。同大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。長岡技術科学大学助手、高松工業高等専門学校助手、群馬大学講師、東洋大学准教授などを経て、2019年より現職。専門は災害社会工学。災害情報のあり方や住民行動の特性、防災をめぐる住民と行政とのコミュニケーションのあり方などの研究に従事。近年では避難情報廃止論や臨床防災哲学などの論考を発表。2020年に日本災害情報学会廣井賞(学術功績分野)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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