内容説明
明治神宮外苑に建つ聖徳記念絵画館に、結城素明の壁画『江戸開城談判』が展示されており、これは中学教科書にも掲載され、いわば「正史」としての取り扱いを受けている。この壁画『江戸開城談判』は、慶応4年(1868)3月14日、江戸薩摩藩邸において、西郷隆盛と勝海舟の「談判」によって、江戸城が無血開城されたことを表現している。山岡鉄舟を研究している者として、この壁画のタイトルの「談判」という言葉に対して、かねてより疑問を持っていた。それは、慶応4年3月14日を遡る3月9日、山岡鉄舟は徳川慶喜から直命を受け、官軍の参謀・西郷隆盛と「談判」し、慶喜の命を保証させ、江戸開城条件提示を受けたのであるから、この3月9日時点で江戸無血開城は実質的に決まったのではないかという観点からである。では、慶応4年3月14日の江戸薩摩藩邸における西郷と海舟の二人を、結城素明が「談判」壁画として描いたのは、何を意味しているのであろうか。
目次
第1章 中学教科書で「正史」と認められている
第2章 明治神宮および明治神宮外苑、聖徳記念絵画館建設の創建経緯
第3章 聖徳記念絵画館を飾る80点の壁画決定経緯
第4章 二世五姓田芳柳
第5章 『江戸開城談判』の画題考証図
第6章 壁画『江戸開城談判』の検討
第7章 海舟が大刀を左脇に置きたる位置は妥当か
第8章 結城素明の検討
第9章 問題は吉本襄の『氷川清話』に存在する
第10章 「談判」と大刀の位置の総括
著者等紹介
山本紀久雄[ヤマモトキクオ]
1940年生まれ。中央大学商学部卒業。山岡鉄舟研究会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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