内容説明
こぼれた種子が発芽して新たな植物が芽生える。その小さな小さな芽生えは、森の成り立ちを理解する鍵を握る。森の中で樹木がその場を得、成長を続けられるかどうかは、ほとんど芽生えの時期に決まるからだ。森林の動態を考えるうえで欠くことのできない実生の生態とその研究法を紹介する。
目次
第1部 すべての森林は芽生えからはじまる(山で芽生えを見つめてみよう―実生の生態からみた多様な樹種の共存の仕組み;森林を再生する埋土種子―人工林を伐ると多様な植物が生えてくる)
第2部 環境に敏感な芽生えの姿(樹木の分布は芽生えで決まる―地形と実生の関係がもたらす森林の構造;タネの大小が森林の神秘を紐解く―種子のサイズと実生の成長パターン;自ら稼ぐか、親のすねをかじるか―光への応答反応からみた実生の戦略)
第3部 芽生えをとりまく生物の世界(種子につく菌が芽生えをまもる?―種子菌の化学的性質;地中の巨大なネットワーク―ミニレビュー菌根と芽生え;母樹下になぜカスミザクラの芽生えがないのか?―発芽前種子の死亡要因)
第4部 芽生えを研究する方法(芽生え調査の「いろは」と「壺」―実生の生態のしらべ方とまとめ方;芽生えの親はどこにいる?―実生の親木を特定するDNA分析技術)
第5部 芽生えの生態学から森づくりへ(芽生えから種の多様な森林をつくる方法―天然林施業の技術と歴史;熱帯での森づくり―種子から苗木、そして植林)