内容説明
本書は、近代日本における民主主義の課題の歴史的分析を、「地域社会の中の部落問題」の究明という視角=方法によって行い、そのことを通して、近代日本における地域の歴史的特質を究明しようとするものである。分析に際しては、中世以来の村落の自律的な発展、「奈良段階」を画した高い土地生産力、地主制と小農民経営の高度な発達、地主の階級的組織化と農村社会運動の高揚等々の特質をもつ奈良県を対象とする。
目次
序章 近代日本の地域社会と民主主義に関する歴史的研究の課題―「大正デモクラシー史」論と地域史研究の検討を手がかりに
第1章 日露戦後の地方改良事業と部落改善政策
第2章 第一次世界大戦期における部落改善運動の二つの潮流―『明治之光』と部落改善運動
第3章 第一次世界大戦期前後の支配政策と部落改善運動―水平運動と融和運動の分岐点
第4章 在村地主と地域社会―奈良盆地における一在村地主の「三徳式」経営
第5章 「差別小作料」考―地域社会における未解放部落の位置についての一考察
第6章 地域社会の秩序構造と部落問題―水平運動の課題をめぐって
第7章 日露戦後―1920年代の農民運動と地域社会
補論 地域社会の中の米騒動と部落問題―藤野豊・徳永高志・黒川みどり著『米騒動と被差別部落』の検討を通して