出版社内容情報
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著・文・その他
内容説明
ガダルカナル島奪回作戦(昭和17年)で一木清直大佐率いる約900名は1万人以上の米軍に挑み、あえなく全滅した。戦後、「一木は、わずかな兵力でも勝てると敵を侮り、敗れた後は軍旗を焼いて自決した」「一木の無謀な戦闘指揮が敗因」という評価が定着していたが、果たしてそうなのか?一木支隊の生還者、一木自身の言葉、長女の回想、軍中央部や司令部参謀などの証言をはじめ、公刊戦史、回想録、未刊行資料などを読み解き、作戦の実相を明らかにする。
目次
序章 事実と異なる「史実」―一木支隊をめぐる定説への疑問
第1章 なぜ一木支隊長は征くことになったのか?
第2章 なぜ一木支隊長は彷徨したのか?
第3章 なぜ一木支隊長は厳しい条件を受容したのか?
第4章 なぜ一木支隊長は攻撃を続けたのか?
第5章 なぜ一木支隊長は全滅させてしまったのか?
第6章 なぜ一木支隊長の教訓は活かされなかったのか?
終章 作為の「史実」―一木支隊全滅から見える日本軍の瑕疵
著者等紹介
関口高史[セキグチタカシ]
防衛大学校防衛学教育学群准教授。1965年東京生まれ。防衛大学校人文社会学部国際関係学科、同総合安全保障研究科国際安全保障コース卒業。安全保障学修士。2014年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roatsu
26
昭和17年8月7日に生起したガ島戦にて最初期に逆上陸し優勢な米軍の前に力戦空しく全滅に近い形で敗退したことのみが定説化している一木支隊と周辺の動きに改めて光を当てる力作。玉砕の嚆矢であり、戦争勝利のための陸海軍共調など望むべくもない大本営の粗雑な統帥の末、最前線の精兵が本領発揮できないまま非業に斃れた事例の典型ともいえる本件の検証は一人一人かけがえのない人生のある同胞だった将兵への手向けとかかる悲劇を生む危険を持ち続け何ら反省の無い日本人のガバナンスへの警鐘として意義深い。戦中を生きた父も一木支隊の名は2018/04/08
香菜子(かなこ・Kanako)
21
誰が一木支隊を全滅させたのか ガダルカナル戦と大本営の迷走。関口 高史先生の著書。終戦記念日の時期になると戦前の日本や太平洋戦争についての本を読みたくなる。誰が一木支隊を全滅させたのかについて明確な答えはないし誰が一木支隊を全滅させたのかについての正解を得ることはできないのかもしれないけれど、ガダルカナル戦と大本営の迷走による惨劇のようなことは二度と繰り返してはいけないことは誰にでもわかること。こうして好きな本を好きなだけ読めるのは平和があってこそだから。2022/08/17
フロム
15
一木支隊壊滅の真実を暴く!!位の勢いで執筆されているが実際の所、あまり新味は無く殆どが事実の再確認。ただ一木支隊長と隊の動きがそれこそ時間単位で追っているので現存する刊行物でこれ以上ガタルカナル攻防戦の発端と初戦が分かる本は存在しない。後、過剰に好戦的な規範の中で優秀とされる人間を先遣部隊の長にしたらそら見的必殺になりまわすわ。と当たり前の事に触れられているのも好感が持てる。文章が上手く読み易いが正直ある程度知識が無いときついと思う。トリビアが意外と多いのでこういうのが好きな人には楽しめる一冊だと思う。2018/07/02
アキ
13
NHKスペシャル「激闘ガダルカナル 悲劇の指揮官」を録画したので、参考図書のつもりで図書館から借りて先に読む。物量で敵わぬ相手に対しては情報よりも精神で向かおうとした硬直した思考はもはや皇軍の宿命。冷徹な分析や不利な情報があっても、あくまでも作戦遂行、敢闘精神のもとでの前進を無理強いし、かつ万が一の責任回避にも長けた参謀本部の体質。そこから見えてくる、すべての責任は現地指揮官へという構図。負けを正しく認められないまま、正しい勝ち方にこだわり続けてきた皇軍。海軍の「責」と陸軍の「罪」は放置されたまま。2019/09/08
K.C.
8
太平洋戦争のターニングポイントとなったガダルカナル島の先頭に投入された一木(「いちき」ではなく「いっき」と読むらしい)支隊を巡り、資料を丹念に狩猟した著作。戦史では一木支隊がぼんくらだった「ということに」なっているが、実際はそうではないということを示す。 戦争(戦闘)とビジネス、違いはあるが、昨今の不祥事に重なる点が多数見え隠れして興味深い。一木支隊が投入されるに至った経緯から、大本営(本社)、現地軍師団(司令部)と支隊の意識の違いなど、名著「失敗の本質」で取り上げられるだけある。2018/06/13