内容説明
辛亥革命、内戦…。時代に翻弄され、さまざまな生き方を模索する人々の苦悩。日本軍に蹂躙され、離散する家族、愛する人の死…亡びゆく旧中国を見据え、新中国の芽生えを描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
74
原著は林語堂が在米中(1939)に著し、反響を呼んだ英文小説。上巻は北京の上流家庭の人々の日常を描き、あたかも華麗な絵巻物を観るような感であった。下巻は一転、曽家に嫁いだ木蘭(ムーラン)を中心に一族の人々が、割拠する軍閥政権の抗争、日本軍の侵略と続く混乱の嵐に巻き込まれていく姿を追う。元・清朝大官曽氏の保守、豪商・父姚氏の荘子思想、木蘭の秘めた愛などが交差する。重慶を目指す避難行の中で、木蘭は新たな自分の生き方に目覚める。そこに著者は戦乱の後、立ち上がる新中国へ期待を込めてると感じるのは読み過ぎだろうか?2020/12/13
しんすけ
2
現代の『紅楼夢』と云える作品。時代背景は義和団事件(1900年)から、盧溝橋事件(1937年)直後まで。曹雪芹の時代(18世紀)は、清朝政権が比較的安定していから『紅楼夢』は家庭劇の範囲を逸脱することはなかったが、林語堂が生きたのは中国動乱の時期だった。そのため社会動向が作品に色濃く反映している。ロマン・ロランの『魅せられた魂』もほぼ同時代を扱い社会背景を意識せずに読むことはできないものだった。物語は波乱万丈でありながらもロマンを醸す。まさに名作に値する。だが惜しいことに、日本ではあまり普及していない。2016/05/22