内容説明
「助三郎さま―」堂の裏手、つまり2人の姿が完全に街道から見られなくなった時、鈴江は自分もわざと声をはずませ、切なげにして助三郎の胸へとすがりついていった。むろん握った男の指は離しはしない。「ああ、鈴江さん、ど、どうなされたのです。あなたは用、用があってここへ―」助三郎はあえぎながら言った。前の副将軍、水戸光国は家を綱条にゆずって悠々と隠居生活を楽しんでいた。が、江戸では将軍の跡継問題をめぐって甲府の綱豊と紀州の綱教との間で争いが起きていた。政道と正さんと江戸へ出立した黄門のお命頂載と、老中柳沢吉保の命を受けた拓植忍者が暗躍する。面白さ満載のオリジナル活劇。