内容説明
「内証だぞ、その刀はな、おとわが真田の殿さまの子を妊って、お産に帰って来た時証拠に貰った宝物だ。何しろおとわは源二郎さまを産んだんだからな」―老婆の呟きが絶えた。幸村は老婆の傍に坐り込み、鎧どおしを取りあげて柄に打ち込んである六文銭の旗じるしに見入った。真田源二郎とは幸村の幼少からの通称であった。自らの血の疑問に悩む幸村に今、越前の大谷吉継の娘・浪江との縁談話が持ち上がっていた。そして雄々しい若者達が幸村の許に集まっていた。戦国一の名将・真田幸村の生涯を描く傑作時代長篇。
「内証だぞ、その刀はな、おとわが真田の殿さまの子を妊って、お産に帰って来た時証拠に貰った宝物だ。何しろおとわは源二郎さまを産んだんだからな」―老婆の呟きが絶えた。幸村は老婆の傍に坐り込み、鎧どおしを取りあげて柄に打ち込んである六文銭の旗じるしに見入った。真田源二郎とは幸村の幼少からの通称であった。自らの血の疑問に悩む幸村に今、越前の大谷吉継の娘・浪江との縁談話が持ち上がっていた。そして雄々しい若者達が幸村の許に集まっていた。戦国一の名将・真田幸村の生涯を描く傑作時代長篇。