内容説明
奇妙な植物の繁殖、人間たちの獣への変身、無人の動物園や謎めいた建物の情景…。魅惑的で不思議な世界が次々に描き出される、『狼の血族』、『モナリザ』などのカルト・ムーヴィーの監督によるアニミズムやエロチシズムのイメージに満ちた長篇幻想小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
93
美しく、謎めいた表紙の雰囲気にぴったり合った小説。主人公の男の体が不気味に変わり始め、やがて彼は社会の枠からもはみ出して向こう側の世界に行ってしまう。人間というより、悪夢に出てくるような獣に変わってしまうのだ。ふくろうに導かれ、空を飛ぶこともある。現実と幻想の世界を行ったり来たりする情景描写が美しく、私の好きなマグリッドの絵が活字によって表現されたような趣があった。幻想の世界が現実に侵食してくるような結末に驚いた。タイトルの『獣の夢』はこれを示しているのだろうか。2018/06/24
藤月はな(灯れ松明の火)
78
獣と化していく男の物語。獣と化していく様子に最初は哺乳類を想像していましたが、だんだん、H・R・ギーガー的な獣像へと変換することになりました。人間としての感覚や思考はそのままなのに変化していく彼はだんだん、親しい者からも疎まれていく。しかし、カフカの『虫』と違い、生き残れたのは、彼自身が自らの意志で外に出て、自我の閉じた孤独から免れたからだ。自分が手に入れた(世間一般でも推奨されている)ものが実は儚いものだと感じる彼だが、人で無くなっていく彼を恐れずに慕う少年の存在が清々しい。しかし、突然の終末に呆然。2018/07/12
まっきaka谷林
3
霧のように静謐な幻想譚。アンナ・カヴァン『氷』が好きな人の感想を聞いてみたい。2012/12/09
じゃくお
1
あまりにも説明が無さすぎて面白くなかった。これが幻想的ということなのですかね?個人的にはそのようには捉えません。2015/08/07
世玖珠ありす
1
幻想文学なので、世界観も何もぼやけた世界なのは承知でしたが、それでも今ひとつ分からなかったなぁ。人が人でなくなった時…を描きたかったのなら、獣性をもっと出しても良かったように思いますが…。2013/07/09