内容説明
風変りな幻想の博物館の世界を描いた表題作「バーナム博物館」、アラビアン・ナイトの魅惑の源を探った「シンバッド第八の航海」、幻影の女性がもたらした甘美な呪い「ロバート・ヘレンディーンの発明」、『不思議の国のアリス』のパロディ『アリスは落ちながら』、ミステリアスな雰囲気に満ちた「探偵ゲーム」、謎めいた芸人の鬼気迫る生涯の物語「幻影師、アイゼンハイム」他、全10篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
♪みどりpiyopiyo♪
33
幻想の航海、盤上ゲーム、魔術、博物館…。最後のロマン主義者ミルハウザーが織りなす幻影と現実のモザイク模様。■風変わりで謎めいた世界がそこはかとなく面白かった♪ ときに『不思議な国のアリス』や『千夜一夜物語』を下敷きに、想像力の赴くままに紡ぎだされた十の物語。私たちの日常のそこここに「もう一つの世界」に通じる扉があると感じられます。離人感のある文体(?)も好ましく。■夢と現の境目のあやふやな感じがミルハウザー・ワールドなのだとしたら、この人 もっと読んでみたいです ( ' ᵕ ' ) (1990年)(→続2018/07/26
ネロリ
10
精緻な文章は時空間も虚実も操り、点描画のような光が瞼の裏に残る。表題作や「幻影師、アイゼンハイム」のようなゴシックな小道具も魅力だけれど、「アリスは、落ちながら」の遊び心や、「青いカーテン」のように日常の狭間にすとんと落ちてしまったり、「探偵ゲーム」のマトリョーシカ的な面白さにもワクワクする。「ロバート・ヘレンディーンの発明」の主人公が抱える鬱々とした世界はまた、病的かもしれないけど、ある意味、青春だなぁと。2012/11/24
ao
5
SF、ファンタジー風味の短編集。どの作品も書き方、内容ともに工夫がされていて、1つとして同じような作品がなかったので飽きずに楽しめた。 『千夜一夜物語』に登場するシンドバッドに8回目の冒険があったらという設定の「シンバッド第八の航海」。『不思議の国のアリス』のアリスがうさぎ穴から落ちたときそこにたどり着けなかったという設定の「アリスは、落ちながら」。表題作のアメリカのある町に存在する奇妙奇天烈な博物館のガイドブックのような「バーナム博物館」の3作が非常に面白かった。 この作者の他の作品も読んでみたい。2022/05/20
まやま
2
ミュージカル「イリュージョニスト」の原作「幻影師、アイゼンハイム」が収録されていると聞いて読んだが、舞台設定や主題は踏襲されているが、ミュージカルではオリジナルのストーリーが展開されていて、自分の読書意図を満たすものではなかった。2025/03/21
hirayama46
2
たいへん細かく作り上げられた、ミルハウザーらしい短編集でした。とにかく描写の積み重ね方が圧巻で、なかなかここまで濃密な文章はほかではないのでは。改行の少なさもあって、1ページ1ページじっくりと取り組まなければいけない本ですが、その分満足感は高いものでした。お気に入りは推理ゲームを通してバランスの悪い家族への複雑で親密な思いを感じさせる「探偵ゲーム」。2018/05/20
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