内容説明
突然の母の死の知らせこそ、それに引き続いて起こる悲劇の序曲にすぎなかった。父の再婚相手の謎の転落死、そしてその父自身までも不可解な自殺を遂げる。15世紀の古い館を舞台にした怪事件の真相が、ポオとギリシャ悲劇を偏愛する少女の日記によって、次第に明らかにされていく。現代ミステリーの第一人者ルース・レンデルの傑作ゴシックロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
りつこ
37
父親をルークと呼び、彼への共感と愛情を綴る少女エルヴィラ。母親が亡くなった後、ルークの再婚相手が転落死しルーク自身も自殺する。「母の死にはまったく関与していない」と綴るエルヴィラだが、再婚相手と父親についてはどうなのか。本当にただの事故と自殺だったのか、あるいはエルヴィラが?ポーに憧れ一切の食べ物を拒絶し成長を拒む少女の異常な心理に読者の目をくぎづけにさせておきながら、実は物語はそれだけには留まらないというこの面白さ。たまらん!2016/09/30
くさてる
22
「その頃わたしは毒を盛ることなど考えもしなかった」という冒頭の一文からぐっと引き込まれた。偏執的に父親を愛する少女、甘いものに目がない妹、独善的な父親など、どの登場人物にも好感が持てないのに、読み続けずにはいられないのはさすがレンデル。褒めてます。そして、どんどん緊張感が高まり、だれでも予想出来る悲劇が……と思わせておいて、思わぬ着地点に落ち着く。しかし、そこでほんとうの不穏が姿を現すさまが怖いです。良かった。2020/11/25
Mayu
8
榛野 なな恵さんの漫画papa told meのおまけページ?でルース・レンデルさんをはじめて知り、読んで見ました。舞台装置がすごく好きな感じで、文章も吸引力があって、先を急いで読んでしまいましたが、何が実際に起きたのかちょっとよくわからないところもありました。結局妹が…ってことだと思うのですが、主人公が父に執着してしまった理由と同様、スピニーが何故そんなことをしてしまうのか(動機)が分からなくて??それだけまいってた、という風に捉えればよいのかな。とはいえ、面白かったので、この方の他の作品も読んでみたい2019/04/04
Cinejazz
5
中世の時代の古い館と、そこに住む若い姉妹の物語。拒食症でエドガ-・アラン・ポオを耽読する姉、過食気味で童心のまま育つ妹、何かがおかしい雰囲気で頁を繰る。母親の病死、父の再婚相手の事故死、父親の自殺と不幸の連続が一人称で語らる狂気の潜む恐怖の一篇。2018/11/02
夜歩く
2
レンデルにしては珍しい一人称の中編小説。ポオを愛読する思春期の少女の話、文体までポオを意識してますね。おまけに表紙のイラスト通り黒猫の幽霊という小道具まで用意して。そして、このまがまがしさも、素晴らしい出来。本書は今までノーマークでした。レンデルの作品の中でもかなり上位に入る。”ゴシック”表記ではなく”ゴチック”表記なんですね。2025/01/11




