内容説明
反ファシズム・反ナチズムの闘士、「行動する作家」として勇名を馳せ、ド・ゴール内閣の文化大臣としても活躍したマルローの、若き日の異色幻想短篇集。イメージがイメージを呼ぶ詩的小宇宙とも言うべき、「風狂王国」「紙の月」「ラッパの鼻をした偶像のための書」の3篇収録。新訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
94
          
            幻想的な3つの短編。「傲慢」や「淫乱」と言った七つの大罪が死神の命を狙う「紙の月」が好みだった。どの短編もシュールなイメージが奔流のように続いて読み手を圧倒する。華麗なイメージの核にはニヒリズムが感じられて、その点は稲垣足穂の『一千一秒物語』に似ている。このニヒリズムを克服しようとしてその時代の状況の中で行動するのが、後年のマルローの作品である『人間の条件』の登場人物たちなのかもしれない。2014/02/09
          
        藤月はな(灯れ松明の火)
54
          
            「一千一秒物語」や「黄漠奇譚」(稲垣足穂)や「見えない都市」(イタロ・カルヴィーノ)が好きな人はこの本も気に入るだろう。表題作は一人の男の流転が流れるような幻想の中、語られる。王に兵として召し抱えられるも夜に出てくる自身の悪魔に怯えた男。だが、自身たちの敗北を自覚した後の清々しさは俗世からの柵から抜け出せた者の強みである。最後の年齢を言い訳にしない所も素敵だ。「紙の月」は死神を弑さんとする七つの大罪の暗躍を描く。しかし、遂に死神は息絶えるがそこで大罪たちは自分の罪を嘆くのだ。永劫のファムファタールに乾杯!2025/03/09
          
        twinsun
8
          
            「風狂王国」、「紙の月」、「ラッパの鼻をした偶像のための書」の三篇収載。サン=テグジュペリの「城砦」、カルヴィーロの「柔らかい月」、ニーチェ「ツァラトゥストラ」などが作品を読んでいると思い浮かぶ。時にグロテスク、時に絢爛として、足元がぐらつき眩暈がするような時間が流れる。この不愉快な感覚。それをなんとかすっきりさせようとして読者の前に吐きだしたのか。2025/08/20
          
        刳森伸一
2
          
            どこかしら前衛的な雰囲気のある幻想短編集。面白いと思うのだが、なぜか乗り切れないところがあるのは今日の僕の気分のせいか? いつか再読してみよう。2014/05/12
          
        bittersweet symphony
1
          
            買ってから10年以上ほっぽり出してあった初期短編集。その当時のきっかけは村松剛氏による評伝を読んだことでしたが、この評伝を読もうと思ったきっかけは思い出せません(多分スペイン内戦時の義勇軍・第二次大戦期のレジスタンス絡み)。スペイン内戦に絡んでいると言う訳ではないですが、作家としてはヘミングウェイ的な男くさい写実主義的な作風を予想していたので(代表作は日本語で読める状況ではない)、象徴主義・シュールレアリスム的な内容にちとびっくり。とはいえ若い頃はおしなべてこういう作風になるものだとも思いますが…。2005/08/22
          
        




