内容説明
貨物用にすえられたクレーンに住みつき、女たちが誘っても、戦争が始まってさえ、そこを離れようとしなかった男の奇妙な物語「クレーン」。よりよい暮らしをもとめて旅を続ける夢想家たちの寓話「タイコたたきの夢」。寓意にあふれた物語の底に、深いペーソスをたたえたチムニクの代表作二編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
古古古古古米そっくりおじさん・寺
69
知人のそのまた知人がこの『クレーン』を読みたがっていた。それを聞いた私は、ライナー・チムニク自体を全く知らなかったので、食指が動いた。先日読んだ森まゆみ『路上のポルトレ』に本書の訳者・矢川澄子さんが出ていたのも御縁を感じた。矢川澄子さんのWikipediaを読むたびに澁澤龍彦への怒りが湧いてくる(余談だ)。イラストと文章が半々の創作童話だが、この、人物が小さく世界が広い絵は私の好みである。『クレーン』は何ともいい話である。昔はみんな、自分の仕事に対して、このクレーン男のような愛着を持っていた気がする。2021/01/05
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
5
今江祥智さんの『はじまり はじまりー絵本劇場へようこそ』で紹介されていた本。『クレーン』貨物用にすえられたクレーンに住みつき、女たちが誘っても、戦争が始まってさえ、そこを離れようとしなかった男のおはなし。『タイコたたきの夢』 https://bookmeter.com/books/13025696 絵本で読了。2020/04/14
abaoaquagga
2
巨大クレーンの上で暮らす男を通して時代の変遷を眺める『クレーン』。童話らしいユーモラスな温かさの中に、親友との別れや、かつての栄光が時とともに朽ちてゆく様が象徴的に描かれ、最後には淋しさがよぎる。"よいくに よいくらし"を求めた群衆が世界を放浪する『タイコたたきの夢』ではより皮肉さが強まり、旅を続けるほどに状況が悪化、仲間はどんどん死に、訪れた先の住民にまで被害を与えてしまう。ひとところにあるものと移ろいゆくもの。守るものと奪うもの。対照的な二本だが、どちらも読了後に残滓が胸に宿る。2023/08/06
やんこ
2
挿し絵が素晴らしい!けどね、(戦後ドイツ)児童文学の古典として捉えられてる理由がわたしには分からない。児童文学にしては少々難解すぎやしないかな?2011/09/28
海
1
童話・寓話の形を取っているけれど、実に意味深な作品。第二次世界大戦中に、多感な少年時代を過ごした人が書いたと知って納得した。島国育ちの日本人にはない発想だと思う。2011/05/26