内容説明
ゴールデン・フライヤーズと呼ばれる美しい湖畔の村で起こった世にも奇径な事件。名門マーダイクス家とフェルトラム家の因縁めいた争いと悲劇的な結末。―『月長石』のウィルキー・コリンズとともに当代随一の人気作家であったレ・ファニュの幻の名作径奇小説。本邦初訳。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紫
5
『吸血鬼カーミラ』の原作者として有名ではあるものの、入手困難なレ・ファニュ作品の中の一作。ミステリーなのか、ホラーなのか、どちらつかずといおうか、どちらともとれるといったアンバランスさで物語は進んでいくのであります。全体にとりとめもなく不思議な出来事を並べているといった感じは否めず、ほとんど全ての謎が解決を明示されないまま投げ出されていて、人為的な陰謀だったのか、怪奇現象だったのか、それとも全ては准男爵の妄想だったのか、物語の中では真相は分からないまま。現代の小説の読者には「何だ、これは?」。星4つ。2022/01/29
カケル
3
謎は謎のまま一切の解明もされずに終結する物語。誰か解決編を書いてくれないかな~?2022/03/29
ワッピー
2
マーダイクスの屋敷に久しぶりに当主が帰還して以来、不穏な空気が立ち込めるという設定はわくわくしました。当主の湖への恐れ、庶子の執事フェルトラムの変貌、経済的困窮と逆転、最後の大逆転(といえるのか?)という事件が美しくも荒々しい自然を背景に緩やかに進行していきますが、読者にとって謎が多すぎます。怪奇小説は、謎ときではなくて雰囲気を楽しむものだそうですが、怪奇小説といえるほど怪奇でもない気がするし、推理とも程遠いしなあ。謎だ…2013/02/03
madhatter
2
家同士の因縁を背景にした、所謂ゴシック・ロマンスなのだが、良い意味で「正統派」とは言えないように思われた。個人的に正統派ゴシック・ロマンスとは、最後に謎が概ね解かれるイメージがある。しかし、本作はそう断じてしまうには、フィリップに纏わる謎、フェルトラム・マーダイクス両家に纏わる謎など、解けないままの謎が多い。クライマックスさえ謎の塊なのだ。しかし、説明できないもの、わからないものほど怖いものはないとも思う。2010/06/27