内容説明
カリフォルニア州サリーナスにほど近い港町キャナリー・ロウで、ある日突飛なパーティーが催される。―皆から「先生」と呼ばれ尊敬されている生物学者、ビジネスにはうるさい雑貨商リー・チョン、女主人ドーラの経営する売春宿の女たち、「ドヤ御殿」と名づけられた小屋に寝泊りする浮浪者たちが巻き起す笑いと涙の物語。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
47
山本周五郎はスタインベックを意識することはなかったろうか。弱者への眼差しという点において、生年も没年も一年しか違わないこの二人の作家に共通点を見出した気がした。例えば目を見て小さく頷いたり、そっと肩先に触れたり。キャナリー・ロウの住人一人一人にそんな親愛の情を示したくなる。2017/12/25
白のヒメ
14
再読。カリフォルニア、美しい海岸線沿いの町「キャナリー・ロウ」廃れたイワシの缶詰工場を産業のメインした廃れた町に住む住人達の物語。登場人物達が多く、主人公がはっきり定まってはいない。町に住む人々の暮らしの情景を、ありがままに描く作風は「怒りの葡萄」「エデンの東」とはまるきり違う。そこにはただ生活があるのだ。生と死。笑いと悲しみ。希望と後悔・・・。金は無いけど気持ちだけはある。害は無いけど教養もない人々。だけど一度読み込んで中に入ると去りがたい町なのだ。日本の昭和、ドリフのコントを彷彿とさせるような・・・。2013/11/01
松島
12
閉鎖的で牧歌的なコミュニティでの生活といえばきっとこれから先、キャナリーロウを思い出す事だろう。戦後直後の混沌とした日本とは対照的だったし、現代と比較したらこんな人たち発達障害グレーゾーンと一括りにされてしまうような人もそれぞれ考え誰一人かけてはいけないような世界が広がっている。何度もキャナリーロウに僕は帰りたくなるだろう。読書はいろんなふるさとを勝手につくれるね。最高2022/10/20
DEE
3
どこにもそんなこと書いてないのに、怒りの葡萄のような趣の作品を勝手に期待しちゃっていたので、やや肩透かし。 こういう皮肉交じりのユニークさって、自分はちょっとよくわからない。2016/11/24
まんぼう
1
孤独と死の気配に満ちた物語だった。貧しいけど一生懸命生きる人々のハートフルなヒューマンドラマ!というあらすじだっただけに油断した。今日こそはちゃんとやろう!と思うのに、躓き、全てが裏目に出て失敗する。今回もやっぱり駄目だった。いつもそうだ。と小さくため息をついてまた次の日を迎える。寂びれた貧しい港町にへばりつき、もたれ合うようにして生きる人々の、孤独を積み重ねる人生の断片。アメリカの自然の描写は美しく人々のエピソードは一見ファンタジーな雰囲気で飾られているが、静かに沈んでいくようなしんどくなる物語だった。2024/09/23
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