内容説明
寺の門前で花や線香を商う家に暮らす女系三代。滅びゆく女たちの血の狂気を確かな筆致で描いた第101回芥川賞候補作ほか3篇を含む最新作品集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
39
娘と母、祖母、義母など女性としての主人公たちは皆生き方が上手ではないので、読んでいてしんどい場面が多々ありました。特に最後の「凪」では、義母の介護をするだけの70代(すぎの)さんの働きぶりにため息が出ていたら・・あまりに遣る瀬ない結末が待っていました。どの女性にも共感できなかったのが物足りなさの原因かもしれません。2019/10/13
タカラ~ム
15
勝手企画『多田尋子作品を読む』の第5弾。芥川賞候補になった表題作を含む4篇が収録された短編集。血のつながりがもたらす不幸や幸福、安心や呪縛が描かれた作品集になっている。中でも「裔の子」は、祖母、母、娘の関係性と女系の一族に生まれたことで血の呪縛に押しつぶされそうになる主人公の苦悩と崩壊が描かれていて、血の因果の怖さを感じさせた。「凪」に描かれる寝たきりになった高齢の義母を介護する70歳を過ぎた嫁の話は、悲壮感が抑えられていても、老老介護の厳しい現実が描かれていて、今の時代にも通じるテーマだと思う。2019/11/24
ささらほうさら
0
多田さんの作品を追いかけて読んできたが、この作品集はちょっと雰囲気が違うというか、陰の部分や人生のままならない感じが強い。だから読後感は正直なところ爽快ではないが、やはり胸に残る余韻がある。表題作で主人公が少しずつおかしくなっていく様は見事だし(ただし結末に関しては違うものが私はよかった。これは意見が分かれそうだが、芥川賞の選評をみても同様だったようだ)、「凪」の日常が少しずつ不穏になっていき一気に暗転するのもすぐれた小説だと感じる。2021/06/23