内容説明
小料理屋で働いていた女性の急死から、その馴染み客とのひそやかな交情を淡彩な筆致で描き、粋な感情を流露した表題作ほか亡父と異母兄への複雑な想いを描いた「夏落葉」など傑作短篇8篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
28
☆☆☆☆☆ 淡々としているのに情感が漂う文章が心に響く後期短篇集。小料理屋で男に身体を売ってきた記代が3人の翁を花が散った山茶花に重ねる「陽だまり」異母兄との絶縁、雨の中亡父の墓参をする「夏落葉」性器同士を触れ合わせるだけの静かな性交「青い儀式」ちょんの間めいた小料理屋の女達を眺めてきたような「赤い達磨」急死した小料理屋の女中と5人の馴染み客との交情に密やかな情感が漂う「夕虹」一度だけ体に触れた16歳の芸妓の消息を求めて元芸妓達を訪ね歩く「吹雪」満州で情死した同僚の形見の品「色紙と硯」。他、「夢三態」。2024/07/16
シロツメ
2
九つの収録作品のうち、初恋の人のその後を追い求める「吹雪」が印象深かったです。長い時間が経った後に探し、行きついた先は切ないものでしたが、彼女のその後を知ったことは決して無為ではないのだと思います。2017/05/17