内容説明
女性は、身体的に妊娠・出産・授乳が可能なために、否応なしに母(=母性)の役割をおわされ、また禁忌や産穢・月穢などの触穢観にとらわれてきた。中世における母性のあり方と変遷を、女性と信仰・身体性・惣村との関係からたどって問いなおし、新たな母性の歴史認識を示す。
目次
第1章 中世村落と母性―「女(ムスメ)」の座から女房座へ(年中行事と女性;女房座の成立;女頭人について;如法経田と女性)
第2章 中世の女性と信仰―寄進状・比丘尼・キリシタン(寄進状に見る信仰;巫女と比丘尼;キリスト教と女性)
第3章 中世の女性と血盆経信仰(女性の信仰と血盆経;女性と血穢不浄観)
第4章 中世の出産―着帯・介添え・血穢(妊娠の自覚と社会の認知;出産の風景;産穢とその変遷;月穢とその変遷)
第5章 中世の授乳―乳母と御乳人(二人の「母」と権勢;授乳する乳母と授乳しない乳母;授乳の忌避)
著者等紹介
加藤美恵子[カトウミエコ]
1947年8月、滋賀県生れ。1974年奈良女子大学大学院文学研究科修了、2004年滋賀県立大学大学院人間文化学研究科博士後期課程修了(博士(人間文化学))。元京都橘大学非常勤講師、元大阪府島本町議会議員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のれん
8
本書は日本における女性の「穢れ」と呼ばれる風習について考察している。 女性の月経が不浄であるという考えは世界各地でも見られるので、そういう考え自体が男性特有の見方なのだろう。 しかも日本においては穢れという概念が今日で言う感染に近い現象なので、よりいっそう出産や月経といった女性特有の「性」に男は忌避する文化が生まれてくる。 ただ根本的な中世日本の女性への見方の因果が分からなかったので、もう少しこの穢れという概念について調べて欲しかった(著者の専門は女性史なので仕方ないが)。2020/08/23
陽香
2
201206202017/06/13
Ken-Ken
1
中世に成立した惣村や家制度は、男子が先祖代々の土地を受け継ぐことを基礎とする仕組みだった。それゆえ女性は後継者たる男子を生む責任を負わされ、女性=生む性という呪縛につながった。女性蔑視の仏教思想や発展途上の衛生思想も、女性の身体性を「産穢」「月穢」とする不浄観を固定する要因になった。女性の蔑視の起源を解明することで、正統性を突き崩す。2016/02/21
なぎ
0
血盆経についての記述が興味深い。2012/09/07
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