内容説明
映画、アート、作家、科学、SF、自伝…SF界の鬼才J・G・バラードが遺した現代批評コレクション。
目次
1 映画
2 伝記
3 視覚芸術
4 作家
5 科学
6 自伝―上海からシェパートンへ
7 サイエンス・フィクション
8 エトセトラ
9 自伝―太陽の帝国の記憶
著者等紹介
バラード,J.G.[バラード,J.G.][Ballard,James Graham]
1930年上海生まれ。46年にイギリスに帰国。56年にSF作家としてデビューし、62年に処女長編『狂風世界』を発表。それまでのSFに見られなかった思弁性・文学性を導入し、60年代の「ニューウェーブ」運動の中心人物としてSF界に大きな影響を与えた。2009年4月19日、ロンドンの自宅で死去
木原善彦[キハラヨシヒコ]
1967年鳥取生まれ。京都大学文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士後期課程修了、京都大学博士(文学)。現代英米文学専攻。大阪大学大学院言語文化研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sibasiba
10
ニューウェーブに苦手意識があった昔の流れで敬遠していたが漸く初バラード。凄く馴染む文章で内容もとても面白かったので次こそ小説を手に取るつもりだが入門にはどれが良いのだろうか。自伝の捕虜収容所の話が特に興味深かったので自伝的作品『太陽の帝国』を読むべきだろうか。シュルレアリスムはともかくウイリアム・バロウズは興味対象外だったがここまで賞賛されると『裸のランチ』を読んでみようという気になる。内容とは特に関係ないが南京大虐殺の犠牲者2万人とあったが今何人て推測されてたっけ。2014/07/02
roughfractus02
5
SF を正統文学と捉える作者は、未来風ガジェットや未知の生命体等は描かず、身近なものをや光景にこだわる。それゆえ『スターウォーズ』のような冒険SFを批判し、技術と一体化しながら変容するインナースペースを描く。ダリと精神分析、バロウズとドラッグとテクノロジーはその変容を描いた先達のようである。そのモチーフが少年時代の上海での収容所体験にあることは本書の構成でも強調されている。植民地で支配される側にとって、冒険物語は支配する側の物語であり、支配する側は戦争が終わっても技術に姿を変えて、従属を迫り続けるからだ。2020/11/18
くらびす
5
久しぶりに2013/10/13
くじらい
3
スターウォーズを貶しまくり、ダリを崇め、バロウズを賞賛するバラード。書評もバラードの鋭さが垣間見えて面白いが、やっぱり上海時代の自伝的内容がバラードのルーツという点でいちばん興味深い。あと、「『グレイ解剖学』が20世紀最大の小説である」には笑った。2016/06/29
爐
3
書評やエッセイにおいてなお、シュールレアリズムに影響を受けたバラードの文体そのもののどこまでもSFな切り口がシニカルで優雅な下品さをもって駆使されている様子がよくわかる。バラードは文体に20世紀的語彙の流通を素早く合併することで、SF特有の、現代をノスタルジックにする未来によってしか眺められない現代の新しさと古臭さを実現するショールームのような時間的な変態性を持った文体デザインをものにしている。彼の考えでは20世紀の最も古い文学形式であるSFだけが持ちうる未来の文体技術がやってくるような感覚に魅了される。2011/03/14