出版社内容情報
目に見えない小さな花粉が、隠された真実を暴きだす。
「パット・ウィルトシャーさんですか?」
さまざまな経験を積み、五十代になった花粉学者にかかってきた一本の電話が、彼女の人生を変えた。警察の捜査に協力するなかで、彼女は試行錯誤しながら、花粉や胞子、菌類、微生物、土など自然の痕跡を利用して事件解決に導く「法生態学」という画期的な分野を編み出していく。
死体や衣服、車に残された花粉や菌類を手がかりに、どのようにして殺害場所や時刻を特定し、消えた死体のありかを発見し、犯人の嘘を見破るのか? 数々の難事件の真相究明に貢献したイギリス法生態学のパイオニアが語る、波瀾万丈の人生と科学捜査の奥深い世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
7
今の世の中、証拠を残さずに何かを行うことはほとんど不可能なのだなと教えてくれた。花粉!よほど接近して触りでもしない限りつくことのない花粉に、何百年もそのまま残り続ける花粉、(当たり前だけど)限られた季節にしか飛ばない花粉。立件に使うには持ってこいの要素なのだな。そして、アルバニアの犯罪者が「イギリスではイヌを散歩する人がどこにでも出没することを計算に入れていなかった」というのにクスリ。2022/12/20
kamekichi29
4
アメリカのドラマ、「BONES」の花粉版を見ているよう。事件の解明のために行った調査や、調査に関わるようになるまでやなってからの著者の自叙伝的なこともあります。2024/08/09
subabai
4
新しいサイエンスの分野に出会えた作品。 著者は花粉学者として、さらに植物、菌類、昆虫など花粉に関わるものにも非常に詳しく、正義感の強い女性であることが感じ取れた。 科学捜査に花粉が使用され、非常に小さいからこそ痕跡として残る重要な証拠になり、地球上似た花粉分布を示す場所はほとんどないことが強い根拠になることを知った。 幼い頃から自然に触れられる環境と好奇心の強さが、彼女を立派な大人にしてくれたのだろう。便利すぎる社会よりも自分で楽しみを探す環境を子どもに提供したいと強く思わせてくれた。2023/01/20
ももも
4
花粉をはじめとする植物や細菌の付着や移動から、犯罪の真相を追っていく、興味深い取り組みが、女性植物学者の視点から語られる。伝記的な部分も多く、ウェールズを中心とするイギリスの人々の暮らしが垣間見えるのも面白かった。 なかなか類を見ないノンフィクションで、かつ未知の世界に学問的にも文化的にも遭遇できる、貴重な1冊である。2023/01/10
ぷくらむくら
3
CSI的な話を想定していたのだが、半分以上著者の自伝的な要素が含まれていた。だが、それが面白く小説を読んでいるような感覚。科学捜査の面白さと共に認知バイアスを含まない捜査の大変さがよく分かりました。2023/08/26