内容説明
画期的な「代理母」実験や悪名高き隔離実験で愛の本質を追究した天才心理学者の破天荒な人生と愛の心理学の変遷をピュリッツァー賞受賞作家が余すところなく描き尽くす。
目次
弧を描いて飛ぶ愛
ハリー・ハーロウの誕生
人の手に触れてもらえない
アルファ雄
好奇心の箱
愛の本質
完璧な母
愛の連鎖
箱の中の赤ちゃん
冷たい心、温かい手
愛の教訓
行き過ぎの愛
著者等紹介
ブラム,デボラ[ブラム,デボラ] [Blum,Deborah]
ウィスコンシン大学科学ジャーナリズム論教授、サイエンスライター。「ニューヨークタイムズ」「ワシントンポスト」「ディスカバー」など多くの新聞・雑誌に執筆。1992年、霊長類を動物実験として使う倫理問題を論じた新聞連載でピュリッツァー賞受賞
藤澤隆史[フジサワタカシ]
2004年、関西大学大学院総合情報学研究科博士課程修了。現在、福井大学子どものこころの発達研究センター特命助教。社会心理学、認知心理学、脳機能イメージングなどを中心に研究している
藤澤玲子[フジサワレイコ]
1996年、同志社大学文学部卒業。2002年、ニューヨーク州立大学オールバニー校にてMBA取得。現在、フリーランスの翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
511
5
1.この本は科学書であり、実験レポートである。そう、レポートだというのに、なんと愛に満ちたものであろうか。愛することへの愛! 子供たちの繊細さと健気さ! 読み終わった途端に思わず誰かを抱きしめたくなってしまう、そんな暖かさに満ちたレポートをすべての人に薦めたい。良書。2.V字型装置、強制妊娠による邪悪な母親。ハーロウの狂気に満ちた抑鬱政策には胸が張り裂けそうになる。それはこれらの実験が愛を失わんとするハーロウがもがき、苦しみ、自身をすくために他人(動物)を踏みにじっている、非難の向け所のない絶望だからだ。2017/05/18
GASHOW
4
針金でミルクのある人形とミルクがないが毛布にくるまれた人形の実験は有名だ。孤独にすると精神をきたすことから、不安の状態は代謝をおくらせるメカニズムなど面白かった。ラットは実験ごとに殺すくせにサルで愛を測る実験は非人道的となってしまうあたり、西洋の世界ってそうなんだと思う。ただ、サルに愛を測る実験を行うことは人の子供に行っているような感覚に感じなくもないと思う。愛が必要なんだと再認識しました。2015/04/21
saku_taka
4
ハリー・ハーロウ。有名な,「愛情」にまつわるサルの実験を行った心理学者の物語である。当時は行動主義全盛で,「愛情をもって子供を育ててはいけない」といわれていたらしい。愛情を持つことが大切だ,と私たちが常識として思っていることは常識ではなかったのだ。精緻な,そしてインパクトのある研究を展開していく。しかし,愛情を強調することで,女性運動家から強く非難され,そして研究手法の倫理的な問題も指摘されてしまう。研究はもちろんのこと,家族や同僚たち,当時の社会状況など,重層的に話が展開され,非常に面白い。2014/09/01
takao
2
ふむ2017/12/06
モリ
2
心理学を学ばなくても大学で教職課程をとれば、代理母実験の話は出て来る。それくらいメジャーな成果を上げた科学者が、現在では時々マッドサイエンティストのような日陰者扱いで紹介されていたりするのは興味深いことである。倫理的に問題のある実験に加え、挑発的な性格が彼に必要以上の悪評をもたらしているのだろうが、そうした彼の性質があったからこそ、心理学にセンセーションを起こせたとも言えるだろう。実験器具を「レイプ台」と称するようなあけすけな態度が、種々の実験の衝撃をより直接的に人々に突き刺しめたのだと思う。2016/12/29
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