精神医療 〈92号〉 特集:拘束

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  • サイズ B5判/ページ数 127p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784826506885
  • Cコード C3047

出版社内容情報

隔離拘束は精神医療にとって必要悪ではある。それなくして成立たない現実と、最小限としたい理想との葛藤から、問題を浮彫りにする。身体拘束が話題となっている。拘束中の死亡事故が訴訟になっている一方で、転倒によって生じた外傷が拘束しなかったことによるものであるとして、家族等から病院を訴えた裁判もある。
病院の側からすると、拘束してもしなくても責任が問われるという状況が生まれている。精神病床で拘束が急増している背景には、特に強制入院を中心とした精神科救急医療の浸透、認知症を中心とした高齢者入院の増加、身体合併症に対する治療などがあるだろう。
例えば高齢者施設では拘束が制限されていることから、「拘束が必要なら病院へ」という流れがある。身体科病院でも拘束はあるが、それが忌避されると精神科に転院・転科となることがあり、身体合併症の問題と関連してくる。また、拘束に対する医療者の意識の空白化があるのかもしれない。
拘束は精神保健福祉法で認められているが、もちろん無制限に行ってよいわけではない。本人の苦痛や、人権問題との観点も重要であるが、致死的なものも含む種々のリスクを生むことも知られている。技術としての精度を上げる努力という視点も、たしかにあり得る。しかし、そうした視点は拘束それ自体の問題性を見えにくくしてしまうだろう。
また、薬物療法が「化学的拘束」であるという批判がある。本質のところでは否定し得ないが、一方で、薬物療法なしでは精神病の治療はもちろん、周辺症状を伴う認知症高齢者のケアも考えられないのが実情である。この現実に立脚しながら、今回の特集では、拘束についていろいろな側面から切り込み、問題を浮き彫りにしたい。

[巻頭言]拘束と医療(阿保順子)
[座談会]精神科病院における拘束(長谷川利夫、岡崎伸郎、阿保順子、[司会]中島直)
患者中心の精神医療をめざして(加藤真規子)
隔離・拘束を最小化するための4つの視点(竹端寛)
拘束と実践(中島直)
高度急性期医療の場での抑制しない看護へのチャレンジ(小藤幹恵)
身体拘束を限りなくゼロに近づけるために――介護・福祉の視点から(石川秀也)
拘束――迷う判断と目標のあり方(有本慶子)

[コラム+連載+書評]
[視点53]入院患者の権利を守るために、本当に必要なこと――日精協「アドボケーターガイドライン」のまやかしを越えて(原昌平)
[連載 異域の花咲くほとりに8]精神療法と精神分析について(菊池孝)
[連載 神経症への一視角5]神経症から不安障害へ――当事者の視点から疾患概念を再考する(上野豪志)
[連載]精神現象論の展開4(森山公夫)
[コラム]クライエントの希望に沿った支援を継続するために(知名純子)
[書評]『あたらしい狂気の歴史――精神病理の哲学』小泉義之著[青土社刊](浅野弘毅)
[紹介]『保安処分構想と医療観察法体制――日本精神保健福祉士協会の関わりをめぐって』桶澤吉彦著[生活書院刊](高木俊介)
[編集後記](中島直)

阿保順子[アボジュンコ]
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中島直[ナカジマナオシ]
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『精神医療』編集委員会[セイシンイリョウヘンシュウイインカイ]
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