内容説明
資本主義の農業問題は、労働力の再生産に不可欠な産業でありながら資本主義には馴染み難いという農業の特性に起因して発生する。ロシア革命勃発以降、反体制運動が世界的に高揚しつつあるなかで、1929年10月、ウォール街の株価暴落に端を発した世界恐慌は日本を直撃し、分厚い過剰人口を抱えた農村は、不定型かつ錯綜した反体制エネルギーを暴発させる土壌となった。資本主義が危機管理能力を喪失する中で、その役割を担ったのは国家であった。以来国家による農民の反体制エネルギーを吸収・溶解する政治・経済的対応の連鎖の下で、特殊日本的ファシズム体制が醸成された。資本主義と農業の相容れない経済・社会構造とファシズム体制の発生~崩壊のメカニズムを緻密に検証し、資本主義と農業問題の本質を解読する。
目次
序章 分析視角と分析課題
1章 農業問題発生の歴史過程
2章 農業問題の処理とファシズム体制の形成
3章 農業問題の処理とファシズム体制の成熟
終章 ファシズム的農業問題処理の性格と限界
補論1 戦後日本の農業問題
補論2 現代世界の農業問題
補論3 世界農業問題―渡邉「世界農業問題」論の現代的意味
著者等紹介
工藤昭彦[クドウアキヒコ]
1946年10月、秋田県生まれ。1974年3月、東北大学大学院農学研究科博士課程修了。1974年4月、秋田県立農業短期大学、助教授を経て、東北大学大学院農学研究科・研究科長・教授(農学博士)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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