出版社内容情報
いまの私って誰だろう、と思っている私は、すでに私ではない。人間の身体を形作っている細胞は秒速で分裂を繰り返し、いまの自分とは違った生き物になっている。ただ意識されないだけなのだ。私の意識も意識下の自分と無意識の自分とは重なり合っていて、無為意識の自分は、私が思ってもみなかった思考や行動をともなうことがある。
道具を使い、言語を持ってこの地球を征服した人間という生き物は、その原罪ともいうべき意識(無意識)に支配されて、生命を自ら絶つという不条理や自然の摂理を超えた性欲や殺人や犯罪に翻弄されることになる。
プロローグ
東京タワーの見える部屋
リョウブという名の木
私というカラクリ
無効分散
顔ニューロン
GPS
カラスの住む部屋
依存症
壁男
チューリップ
ぬいぐるみ人形
枕が変わると
快楽の箱
幸福な死
隠しカメラ
追認
スイカ
強迫神経症
交信
自殺願望者募集
エピローグ
装画=田中かおり
装丁=臼井新太郎
内容説明
この小説は、作者自身がウツ状態となり、その時の不思議な思考体験をもとに、ウツ状態を脱出後に20篇のショートショートとして書かれたものである。