出版社内容情報
明治35年、村岡素一郎の『史疑徳川家康事蹟』は民友社から出版されたが、忽ちの内に絶版となった。南條範夫・隆慶一郎の小説の原本『史疑』はなぜ葬られたか。正史に記された幻想の近代国家・日本の暗部を解読する。
疑』はなぜ葬られたか/徳川家妨害説/歴史は繰り返す/危険な「史論」/隠された時局批判 /過激な言説/明治三十年代の政局/薩長藩閥への不快感/二人の要人/第3章 伊藤博文と山県有朋/伊藤と山県について/「中間」とは何か/長州藩の卒席班/伊藤博文の生い立ち/少年時代の博文/出世のいとぐち/山県有朋の生い立ち/屈辱的な体験/人生の転機来る/松下村塾と維新回天/伊藤と「華族令」/爵位制度の由来/伊藤の執念/伊藤公爵家系譜/山県と明治天皇/不遜なり山県/宮中某重大事件/最後の革命家/第4章 村岡素一郎と貴賤交替論/若き日の素一郎/立身出世の道/突然職を辞す/『日本神学新説』/家康研究の時代/『史疑』と時局論/内村鑑三の政府批判/内村の維新観/『血史』に於ける維新観/『痩我慢の説』/貴賤交替の着想/「抹殺博士」重野安繹/「変節漢」徳富蘇峰/第5章 「下級武士」論/伊藤博文の「旧宅」/「下級武士」という言葉/軽輩とは/士分への昇格/軽輩から卒へ /卒から士族へ/「新士族」と「下級士族」/歴史学の怠慢/「真相」への遠慮/三浦梧楼の回想/下級武士研究の課題/第6章 『史疑徳川家康事蹟』を読む/『史疑』読解のために/桑田氏の要約
内容説明
村岡素一郎著『史疑徳川家康事蹟』は、明治35年4月、徳富蘇峰の主宰する民友社から初版本が出版されたが忽ちの内に絶版となった。南条範夫『三百年のベール』、隆慶一郎『影武者家康』の小説の原本、『史疑』はなぜ葬られたか。謎につつまれた『史疑』を覆刻し、素一郎の「貴賤交替論」に秘められた危険な思想を克明に跡づけ、正史に記された幻想の《近代国家・日本》の差別性を新たな視点で解読する。
目次
第1章 奇書『史疑』と現代
第2章 『史疑』はなぜ葬られたか
第3章 伊藤博文と山県有朋
第4章 村岡素一郎と貴賤交替論
第5章 「下級武士」論
第6章 『史疑徳川家康事蹟』を読む
第7章 銭五貫と銭五百貫―家康はいくらで売られたのか
第8章 禁書『史疑』の謎
史疑〔覆刻〕