対談 生き抜くこと

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  • サイズ B6判/ページ数 206p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784822808778
  • NDC分類 304
  • Cコード C0036

出版社内容情報

いま最も注目される2人の女性作家が語り尽くす、若者たちの数々の問題。生きづらさ、引きこもり、ニート、ワーキングプア、秋葉原事件……。生き抜くことの大切さを語ります。

まえがき──香山リカ

第1章 生存権って守られてる?──雨宮処凛・香山リカ

第2章 変化してきた日本人の意識──香山リカ

第3章 格差と戦争を考える──雨宮処凛

第4章 いまこそ、生きのびろ!──雨宮処凛・香山リカ

あとがき──雨宮処凛

はじめに──香山リカ

 精神科医になってからずっと「若い人」の問題を考え続けてきたが、いまほど彼らがたいへんな状況に置かれている時代はない、と漠然と感じてきた。
 その「たいへんさ」には二重の意味があるように、これまで私は思ってきた。ひとつは、長引く不況、格差の広がり、非正規雇用の拡大や成果主義導入による労働の激化など、若者を取り巻く社会の側の構造的な問題による「たいへんさ」である。
 そしてもうひとつは、若者自身の内面のなんともいえない、しんどさ、つらさだ。このままじゃいけない、居場所がない、誰にも理解されない、生まれなければよかった。自己肯定感があまりにも低いのだ。そしてこう口にするのは、何も現実につらい状況にある若者だけではない。いわゆる一流企業や官庁で働く人や人気作家、アーティストまでが、「私なんて生きている意味がない」とまじめにつぶやくのである。ある意味で、自己肯定感にもとづくこの内面のしんどさには格差がない、と言ってもよいかもしれない。
 外側からも内側からも「たいへんさ」により責められている現在の若者たち。この人たちにどうやって接し、支えればよいのか、私は臨床の場で考え続けてきたつもりだったが、なかなかうまいやり方が見つけられずにいた。
 しかも、私は「若い人」の当事者ではない。子どももいない。臨床の場で答えを見つけられずにいるあせりもあり、マスコミから「いまどきの若者について分析を」といった依頼が来て何かを話すたびに、「はたしてこんな私に応える資格があるのだろうか」と自己嫌悪の思いが強まったりもしていた。

 そんな中途半端な私の目をひらかせてくれたのが、自分よりずっと年下の雨宮処凛さんだ。
 雨宮さんは十代のころから自分の内面からわき起こる「しんどさ」についてずっと考察を続け、エッセイや小説といった形でそれを言葉に置き換える作業を続けていた。それだけでは足りず、イラクや北朝鮮に行ったりテロを描いた映画の脚本を書いたり、といった「葛藤の行動化」を病的と生産的のギリギリのラインで行ったりもしてきた。
 そしてここ一年あまり、雨宮さんはついにその目を「外側から押し寄せるしんどさ」にも向け始めた。派遣労働者やニート、ネットカフェ難民を社会構造的な問題ととらえ、彼らがいまどういう状況に追い込まれているのか、また何が彼らを産んだのかを徹底的に調べ、考え、発言し、そしてデモ行進やイベントまで行う。彼女により、若者が抱えていた内面の「しんどさ」はくるりと翻転し、外側から押し寄せる「たいへんさ」と接続されたのだ。
 この憂うつ感は、あの法律とリンクする。この空虚さは、あの政治家の政策とリンクする。鮮やかに翻転の作業を続けながら、あなたが悪いわけじゃない、あなたの努力や性格の問題じゃない、というメッセージを届ける雨宮さんの快進撃を見て、私は久々に興奮したものだ。

 その雨宮さんと直接、話す機会がこのたび与えられることになった。
 私はまず、彼女の活躍を賞賛することにしよう。しかし、賛辞をひとしきり送った後は、気を落ち着けてあえてきいてみたいこともいくつかある。本当に、若い人たちの内面的な「生きづらさ」は、社会構造的な問題を解決することで解消されるのか。状況的にはむしろ恵まれていると思われるのに、「生きづらい」と感じている人も少なくないのはなぜなのか。また、この若者の危機の問題は、ほかの社会的弱者の危機、平和の危機の問題とどう関係しているのか。そして、内向きから外向きへと翻転を遂げた雨宮さん自身のモチベーションはどこにあるのか。
 ああ、早く話したい。さっそく始めることにしよう。

内容説明

若者の引きこもり、ニート、ホームレス、メンヘラ、うつ病、自殺、“自己責任”、非正規、偽装請負、違法派遣、秋葉原事件、インディーズ系労組、労働/生存運動、自由と生存のため…いま語りつくす貧困と生存。

目次

第1章 生存権って守られてる?(就職氷河期世代と共通一次世代;きっかけはフリーターメーデー ほか)
第2章 変化してきた日本人の意識(趣味のマンガとゲームを楽しめれば…;クールで合理的だけど、野心的で積極的な考え方 ほか)
第3章 格差と戦争を考える(就職氷河期と若い人の自殺;偽装請負と違法派遣の実態 ほか)
第4章 いまこそ、生きのびろ!(G8の八人を捕まえろ;デモを通して肯定の言葉を取り戻した ほか)

著者等紹介

雨宮処凛[アマミヤカリン]
1975年、北海道生まれ。99年、ドキュメンタリー映画『新しい神様』(監督・土屋豊)に主演。2000年『生き地獄天国』(太田出版)を出版し、デビュー。著書に『生きさせろ!難民化する若者たち』(太田出版・日本ジャーナリスト会議賞受賞)など多数。現在は生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。フリーター全般労働組合賛助会員、心身障害者パフォーマンス団体「こわれ者の祭典」名誉会長。週刊金曜日編集委員。「反貧困ネットワーク」副代表

香山リカ[カヤマリカ]
1960年、北海道生まれ。精神科医。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。臨床経験を生かして、各メディアで社会評論、文化評論、書評など幅広く活躍し、現代人の“心の病”について洞察を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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寛生

38
【図書館】犯罪とその社会的背後関係との鋭い指摘がいいし、そういう視点は稀だ。香山が精神科医として政治的意図とその社会構造の底にある無意識との関連性について言及しているのもいい。又憲法9条と25条をつなげて考える重要性について訴えている。平和問題は労働条件、人間の尊厳、倫理や雇用まで影響し、切っても切れない問題なのだと。若者の危機、生きづらさと平和の問題がつながっていると指摘する香山。その〈生きづらさ〉は人気作家、官僚からアーティストにまで広がっている。ただ、192頁の香山のキリスト教理解は少し曲解しすぎ。2014/03/22

みゃーこ

31
4年前雨宮さんと社会活動家バリバリで彼女は自分の考えが突飛であることに理論がちゃんとあるのかもしれないが、一般ピープルには理解不可能だと知っているかのようなそっけない返事が面と向かっては多かったのだが、当時の奇抜な活動表現、服装とは裏腹に非常にナイーブで人見知りな印象で彼女の活動趣旨やめんどくさい対話は苦手そうで、思想信条信念、難しいことは直接語らず、私の本を読んでくれという感じだった。本書においての対談にはあまりタイトル通りの中身がない気がした。「働いていくのが大変でみんな普通に生きていけないとみんなが2015/05/28

いろは

23
独身で実家暮らしでアルバイトな私。きっと10年後もそうだろう。そんな私だけど、「自由なお姉さん」として憧れられたい願望がある。その願望を見事に打ち砕くのが雨宮処凛。「親が死んだらどうするの。」確かにそうだ。もっと稼げるようにならなければ。そう思わせてくれるところは良いのだけど、若者の現実を見せられるので、読むに従って、怖いし暗いし痛い。しかし、そのぶん雨宮処凛は社会的弱者の味方なので、撫でてくれるところもある。お金ないし、苦しいし、辛いし、その気持ちは解るけども、その範囲内での幸せを、見つけて生きようよ。2018/08/11

朝日堂

20
今日から生活保護費の引き下げがはじまる。最大で10%の引き下げである。一方、最低賃金との逆転現象が起こっている地域は11都道府県にのぼる。いずれにせよここにワーキングプア層も含め「健康で文化的な生活」が営める世帯がどれくらいいるのか甚だ疑わしいところである。私はこの二人の著者を積極的に読まないのだが、底辺から見た社会という絵を見ることができた。格差の上にいる人たちが住む田園調布に、多くの貧困層が集いなんとなく歩いてぼやく、というようなデモをやっているうちはまだ幸せだと思った。真に貧しい者は黙して死ぬのだ。2013/08/01

mari

3
知っておくべき事だとは思うが、なんとも切なくやり切れなく、ドーンと落ち込む感じで目先真っ黒感。。いろいろ感想はあるけど、う〜ん。。。2011/08/20

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