出版社内容情報
独立メディアTUPが配信した300本あまりのなかから厳選した作品を翻訳し直したものと、新たに翻訳した20余篇のアンソロジー。「イラク戦争」を起点とし、占領する側とされる側の民衆は何を考え発信しているのか、隠された「真実」は何か。マスメディアでは報道されない世界の声。
考えて欲しいこと
まえがき
第1章 イラク戦争
―― 戦前
平和のモカシン~イロコイ女性長老のアピール カンティネタ・ホーン
世代を超えて続く、イラクの劣化ウラン被害 ダグ・ロッキー
*ブッシュ、ラムズフェルド、ブレア、ストローは聖誕教会立ち入り禁止
―― 戦中
*ある父親の死 スヘア・ミケル
イラク人戦没者の扱いにアメリカの不名誉を見る ジャック・マイルス
ドイツ人考古学者からのバグダッド便り ヴァルター・ゾンマーフェルト
―― 戦後
ベテランCIA高官が暴く大量破壊兵器疑惑の真相 ~9.11からイラク侵攻まで レイ・マクガバン・インタビュー~ ウィリアム・R・ピット
路上にて ~元通訳マジン・ジャマー、無名の男の死を語る~ デイヴィッド・ヒルファイカー
イラク女性は国際女性デーを祝えるか メディア・ベンジャミン
石油のために死ぬのはイヤだ ジェイ・シャフト
兵士たちよ、人間らしさを手放すな ~親愛なるイラク駐留の兵士たちへ~ スタンン・ゴフ
日本女性こそイラクの女性支援の適役だ ~ベアテ・シロタさんからのメッセージ~ 菅原 秀
第2章 アメリカといられる ~英国奴隷解放史~ アダム・ホークシルド
あとがき
翻訳者紹介
著者紹介
まえがき
二〇〇三年三月、国連安全保障理事会の最終承認を得ないまま、米英主導のイラク攻撃がはじまろうとしていました。国連中心を唱えていたはずの日本政府も、国際紛争の平和的解決を誓った憲法はもちろん、第一条に武力行使の抑制と国連重視を明記した日米安保条約さえ踏み越えて、開戦支持の構えです。にもかかわらず日本のマスコミ報道は、9・11事件の余波でブッシュ政権に逆らえない米国大手メディアの受け売りが多く、事態を深く幅広い視野から見つめるための充分な材料を提供できているとは思えませんでした。
しかし、同じ英語圏でも英国メディアや各国の独立系サイトには、もっと多面多層的な情報が溢れていて、この戦争の必要性も正当性も疑わしいばかりか、世界をいっそう不安定化させかねないことが読み取れました。これは9・11以来、ずっと続いてきた情報と真実の大きな亀裂です。もちろん英語圏の外に出れば、アメリカ政府べったりの世界観はさらに孤立しているでしょう。日本と日本人が二一世紀をより良く生きていくには、亀裂の片側の偏った情報に頼るだけでは危なすぎる ―― そんな危機感から、インターネットで呼びかけ合った一〇人足らずの有志が、TUP(Tranイラクだけでなく地球全体から戦争をなくすために、深く実践的な思索の材料を提供すること。いっぽう、あまり過激な陰謀説の類には飛びつきませんが、現代の国際情勢を理解するには相当踏み込んだ見方も必要なので、ときには異端的な分析を取り上げることもあります。アマチュアで無償のボランティアですから、内容の検証や訳文の質にはおのずと限界があるのも確かです。しかし、インターネットは惑星大の頭脳といわれるように、日々戦争と平和の問題を考え続ける人びとが発表したものを、日々読み続ける目の肥えた人びとが取捨選択して残る論説は、ときに一国の政治家や評論家をはるかに超えた精度と先見性を持ちえます。TUPはそうした地球市民の協働効果を活用して、知ることが希望と力になるような事実を掘り出したいと願っています。本書やTUP速報のバックナンバーから成否を判断してください。
その意味で、マスコミはTUPの敵ではなくライバルです。TUPが健闘することで、本職のジャーナリストたちがもっと奮起し、行政・司法・立法の三権をチェックする第四権力としての自覚を強めてほしいと思います。さもなければ、TUPをはじめ台頭しつつある独立系メディアが、さらに成長
内容説明
二〇〇三年三月、国連安全保障理事会の最終承認を得ないまま、米英主導のイラク攻撃がはじまろうとしていました。国連中心を唱えていたはずの日本政府も、国際紛争の平和的解決を誓った憲法はもちろん、第一条に武力行使の抑制と国連重視を明記した日米安保条約さえ踏み越えて、開戦支持の構えです。にもかかわらず日本のマスコミ報道は、9・11事件の余波でブッシュ政権に逆らえない米国大手メディアの受け売りが多く、事態を深く幅広い視野から見つめるための充分な材料を提供できているとは思えませんでした。日本と日本人が二一世紀をより良く生きていくには、亀裂の片側の偏った情報に頼るだけでは危なすぎる―そんな危機感から、インターネットで呼びかけ合った一〇人足らずの有志が、TUP(Translators United for Peace=平和をめざす翻訳者たち)を発足させました。国内外に散らばる初対面(Eメール上)のメンバーが、まず作業用と配信用のメーリングリストを開設し、これはと思う海外記事や論考を翻訳して、「TUP速報」という形で無料配信を開始。それから一年あまり、手探りで三〇〇本以上の速報を送り出し、巨大なネット空間の一画に、ささやかながら信頼される独立メディアの足がかりをつくることができました。本書は、その中から評価の高かった内容を厳選して、インターネットを使わない人たちにも読んでいただけるよう編んだアンソロジーです。
目次
第1章 イラク戦争(戦前(平和のモカシン―イロコイ女性長老のアピール(カンティネタ・ホーン)
世代を超えて続く、イラクの劣化ウラン被害(ダグ・ロッキー) ほか)
戦中(ある父親の死(スヘア・ミケル)
イラク人戦没者の扱いにアメリカの不名誉を見る(ジャック・マイルス) ほか)
戦後(ベテランCIA高官が暴く大量破壊兵器疑惑の真相―9・11からイラク侵攻までレイ・マクガバン・インタビュー(ウィリアム・B.ピット)
路上にて―元通訳マジン・ジャマー、無名の男の死を語る(デイヴィッド・ヒルファイカー) ほか))
第2章 アメリカという問題(父と子のQ&A―アメリカの外交政策とイラク侵略をめぐって(アナーチー・バンカー)
マイアミ市街戦のタンク・ガール―米州自由貿易園マイアミ会合レポート「未来の断片」(レベッカ・ソルニット) ほか)
第3章 過去と未来に視野を広げて(満州とイラクの関係―歴史に見る占領―日本の傀儡・満州国(ジョン・W.ダワー)
もう一つの9・11事件―悲劇の教訓(アリエル・ドルフマン) ほか)
第4章 希望の種(クリスマス休戦―『塹壕のクリスマス』(デイヴィッド・G.ストラットマン)
塹壕のクリスマス(ジョン・マカッチョン) ほか)