こんな国はいらない!

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  • サイズ B6判/ページ数 221p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784822803643
  • NDC分類 304
  • Cコード C0036

出版社内容情報

なぜ「こんな国はいらない!」と言わなければならないのか? “戦争は防げないことか”“尊厳を生きる”など、人権と社会を問題意識の俎上に、現代日本の核心を衝く。憤怒の健筆が冴える評論集です。

第1部 こんな国はいらない!
1 戦争は防げないことか
赤頭巾ちゃん気をつけて
戦争は防げないことか
戦争の記憶
「敵は殺す」という思想
自衛隊転じて米衛隊
アメリカのアキレス腱
憲法のたたかい

2 報道の自由を問いなおす
正しくない報道
「カレー判決」の後味
マスコミ規制は闇の時代に引きもどす
「個人情報保護」という名の国家管理
いま、新聞報道を問いなおす

3 人命の問題として
反対から停止へ
海のチェルノブイリ――核実験と海底投棄の波紋
廃炉への巨大な一歩
チェルノブイリの子どもたち
実りの秋に想う――子どもに本当に必要なもの
「人命第一」フランスの挑戦

4 尊厳を生きる
悲劇の法務大臣
国威発揚基本法
「最後の炭鉱」に生きる男たちの不安
「太平洋炭礦」それぞれの別れ
小学生大量殺傷事件に思う
レプラなる母
死刑囚永山則夫について
ある保母さんの二四年
無実の少年たちの苦しみ
家族受難の「改革」時代
就職崩壊と学級崩壊
高級官僚のいやらしさ
最後の授業
個人の尊厳と企業教
     ――国体護持・企業防衛意識の束縛からの離脱

あとがきより

 これは、おもにこの1、2年ほどのあいだに、新聞や雑誌に発表した文章をあつめたものである。
 巻頭に、小泉政権の発足を批判して書いた、「赤頭巾ちゃん気をつけて」をおいたのは、この内閣のひとあたりのいい欺瞞性とそれを承知で笛や太鼓を吹き鳴らして歓迎したマスコミの姿勢を、許しがたいものと考えていたからであり、いまますますそのように考えているからである。
 あのときから、この国の全体主義への傾斜が加速された、とわたしはおもう。内容空疎な「改革」をスローガンにかかげた、この「唐様で書く3代目」首相は、あたかも改革者のようなガッツポーズをとって喝采をあびた。
 思いだすだけでも恥ずかしくなるが、タレント本の1冊のように、首相の写真集が刊行され、それがまたマスコミで話題にされた。ついでに商売上手のサントリーがその息子をちゃっかりコマーシャルに起用して、それもまたマスコミにもちあげられる。
 このようにみえすいた話題づくりによって、支持率80パーセント強という全体主義的状況がたちあらわれた。マスコミの常套手段とはいえ、自分がつくりだした英雄の人気にぶらさがって、視聴率や販売部数をかせぐだけかせぎ、あとウルトラ右派ぶりで、後生に悪名を残そうとしている。
 日本を「神の国」といい、「国体」護持をかたり、あるいは暴力団とのつきあいが暴露されたりして失墜した森暗愚宰相をささえていたのは、ほかならぬ森派の責任者だった小泉首相だった。俗っぽくいえば、親分がドジを踏んでドタバタ退場したあと、こんどは森組の「大政」ともいうべき小泉番頭が、貸衣装の法被をひっかけてなにくわぬ顔で、舞台にとびだしてきた。「おなじ穴のムジナ親子」の脚本なのだが、それを先刻承知のうえで、最前列に陣取っていたマスコミがいっせいに囃したて、まるでなにかあたらしい芝居がはじまるように大衆を幻惑した。
 内閣には、森派から小泉本人をはじめ、福田康夫官房長官、塩田正十郎財務大臣など四名がはいっていて、森と中曽根の影がチラチラしていた。小泉首相のカラ人気とは、前任者の森首相があまりにもひどかったから、つまりはだれでもよかった時代気分の反映だった。
 実は、わたしは、この偽装内閣が出現する直前、『くたばれ!自民党』(アストラ)を出版したばかりだった。が、突然わきおこった小泉バンザイの喚声に、「くたばれ!」の声はすっかりかき消されてしまったのだ。いま、もうはなく、より孤立し、イスラム世界と敵対する「日米同盟」の狭い枠内に潜りこんだのである。バグダット市民の大量虐殺開始のあと、ブッシュ大統領からの電話に、小泉首相は「米国は日本のかけがえのない同盟国で、日本も米国の信頼にたる同盟国でありたい」とおべんちゃらをいっている。相手がどんな悪事を実行しても、同盟国なのか。
 そのあと、彼は、「国内重要施設や在日米軍施設などの警戒態勢の強化・徹底を図る」と言明しているのだから、まるでイラクにむかって宣戦布告した気分なのであろう。ブッシュから保安官のポスターをもらい、やにさがって帰ってきたこのおべんちゃら男は、紛争を武力では解決しない、とした平和憲法の理念や日本のあるべき進路についての構想など、考えてみたこともないのかもしれない。
 国連で戦争反対の声がたかまっているいまこそ、日本が平和憲法に依拠して、「戦争はやめろ」と敢然と主張し、反戦と軍縮のイニシアチブをとり、国際社会での役割をはたすチャンスだったのだ。が、こんな無思想の首相をえらんでいるのは、われわれ自身なのだから、もしも日本がテロにまきこまれたにしても、それはおのれの拙さでしかない。
 タイトルの『こんな国はい

目次

第1部 こんな国はいらない!(戦争は防げないことか;報道の自由を問いなおす;人命の問題として;尊厳を生きる)
第2部 人権と社会を意識する(監獄での人権侵害と社会の意識―日本の拘禁施設の過去・現在から見えるもの;マイノリティと想像力;「合理化運動」のなかの身体)

著者等紹介

鎌田慧[カマタサトシ]
1938年、青森県弘前市生まれ。早稲田大学文学部卒業。新聞、雑誌記者を経て、フリーのルポライターになる。著書に、『反骨―鈴木東民の生涯』(新田次郎文学賞)、『六ヶ所村の記録』(毎日出版文化賞)など
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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