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債務、さもなくば悪魔―ヘリコプターマネーは世界を救うか?

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  • サイズ B6判/ページ数 470p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784822251888
  • NDC分類 338.9
  • Cコード C2033

出版社内容情報

■恒久的なマネタリーファイナンス、いわゆるヘリコプタマネー論議の火付け役となった元英金融サービス機構(FSA)長官が書き下ろした衝撃の書。解説は早川英男氏(富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー、元日本銀行理事)。

以下は、アデア・ターナーが寄せた日本語版への序文「なぜ私は『劇薬』を主張するのか?」から冒頭部分を抜粋した。

 「本書の英語版を書き終えた2015年時点で、世界経済が過剰債務に起因する低インフレと低成長の罠にはまっていて、かつタブーとされた大胆な政策を実施しなければ脱却できないことは既にはっきりしていた。この1年でそうした現実はさらに明白になったが、どこよりも明白なのが日本である。(中略)

 本書の中心テーマは2008年の金融危機とそれ以降の長期的な景気低迷だが、この背景には金融システム内の過剰なリスクテイクにくわえ、2008年まで半世紀にわたって続いてきた民間債務の大幅な拡大がある。先進国における家計と企業を合わせた民間債務残高のGDP比は、1950年の約50%から2007年には170%強に達しており、この間、ほぼ毎年上昇してきた。

 だが当時、正統派の経済学はこうした債務比率(レバレッジ)の上昇の危険性をほぼ無視していた。それどころか信用供給を緩和し、レバレッジが上昇することは経済成長にはプラスであり、中央銀行が低インフレを安定的に達成すれば、マクロ経済の安定は確保されると自信をもって主張していた。日本の経験を見ていれば、こうした想定が危険な間違いであることはわかるはずだった。(中略)

 金利がきわめて低い水準に達すると、さらに引き下げても個人消費や設備投資を刺激する効果は低い。そして、この一年の日本やユーロ圏のようにマイナス金利が導入されると、名目需要に対する効果はマイナスになるかもしれない。だが、超低金利がもたらした結果として何より明白なのは、既存の資産保有者の資産が増加したことである。英国では、2008年以降、1人あたりの所得は2%しか増えていないが、既存資産の残高は30%増加している。

 景気の回復力は弱く、その果実は平等に分配されていない。政治的な反発から英国はEU(欧州連合)離脱を決め、米大統領戦で共和党のドナルド・トランプ候補が躍進しているが、それは驚くべきことではない。」

日本語版への序文
  なぜ私は「劇薬」を主張するのか?

■目次
はじめに
  予見できなかった金融危機
序章 重要すぎてバンカーに任せておけない
第1部 肥大化した金融
 第1章 万人のための金融という理想郷
 第2章 非効率な金融市場
第2部 危険な債務
 第3章 債務、銀行、銀行が創造する通貨
 第4章 不適切な債務が多すぎる
 第5章 過剰債務の罠にはまって
 第6章 金融自由化、金融イノベーション、増幅された信用サイクル
 第7章 投機、格差、不要な信用
第3部 債務、経済発展、資本移動
 第8章 債務と経済発展ーー金融抑圧のメリットとリスク
 第9章 不適切な資本移動が多すぎるーーグロ―バル、ユーロ圏という幻想
第4部 金融システムを修正する
 第10章 不安的な金融システムの主犯はバンカーではない
 第11章 ファンダメンタルズを修正する
 第12章 銀行停止、債務汚染に対する課税、株式の奨励
 第13章 債務の量と構成を管理する
第5部 過剰債務の足かせからの脱却
 第14章 マネタリーファイナンスのタブーを破る
 第15章 債務、さもなくば悪魔ーーリスクの選択

エピローグ 女王陛下の質問と致命的な思いあがり

解説  「元英金融サービス機構長官による『異端の書』」 
    早川英男(富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー、元日本銀行理事)

アデア・ターナー(ADAIR TURNER)[アデアターナー]
1955年生まれ。ケンブリッジ大学卒業。2008年から13年まで英金融サービス機構(FSA)長官。現在は、ジョージ・ソロスが設立資金を提供し、ケネス・ロゴフ、ジョセフ・スティグリッツ、マイケル・スペンスらが加わったシンクタンク、新経済思考研究所(INET)所長。ロンドン在住。著書にEconomics after the Crisis.

高遠 裕子[タカトウ ユウコ]

内容説明

遂に本邦初登場!「劇薬」ヘリマネのススメ。

目次

第1部 肥大化した金融(万人のための金融という理想郷;非効率な金融市場)
第2部 危険な債務(債務、銀行、銀行が創造する通貨;不適切な債務が多すぎる;過剰債務の罠にはまって;金融自由化、金融イノベーション、増幅された信用サイクル;投機、格差、不要な信用)
第3部 債務、経済発展、資本移動(債務と経済発展―金融抑圧のメリットとリスク;不適切な資本移動が多すぎる―グローバル、ユーロ圏という幻想)
第4部 金融システムを修正する(不安定な金融システムの主犯はバンカーではない;ファンダメンタルズを修正する;銀行廃止、債務汚染に対する課税、株式契約の奨励;債務の量と構成を管理する)
第5部 過剰債務の足かせからの脱却(マネタリーファイナンスのタブーを破る;債務、さもなくば悪魔―リスクの選択)

著者等紹介

ターナー,アデア[ターナー,アデア] [Turner,Adair]
1955年生まれ。ケンブリッジ大学卒業。米マッキンゼー・アンド・カンパニー、米メリルリンチなどを経て、2008年から13年まで英金融サービス機構(FSA)長官。現在は、ジョージ・ソロスが設立資金を提供し、ケネス・ロゴフ、ジョセフ・スティグリッツ、マイケル・スペンスらが加わったシンクタンク、新経済思考研究所(INET)所長。ロンドン在住

高遠裕子[タカトオユウコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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KAZOO

86
ヘリコプターマネーの提唱者である元イギリスの金融サービス機構長官の論です。国債を無利息の中央銀行債務に置き替える、という論ですが、それに伴い信用を収縮して規制していくということです。どうも後半部分がいつも欠落していくようなマスコミあるいはリフレ派の宣伝文句です。痛みを伴うことには目をつぶってしまってということなのでしょうが、後半の部分を行わないバブルになってしまうと思います。私は一つの卓見だという気はします。2018/01/04

人生ゴルディアス

3
年金が破たんすることはありえない、何故なら……の話とかに出てくる、ヘリコプターマネーをめぐる内容。ヘリマネがそれだけで万能ということはなく、なぜそうする必要があるのか、他に選択肢は…等々と、結論ありきではない感じが好感持てた。家計の貯蓄を銀行がまとめて貸し出すが、銀行はアホたれの上にIT化で産業投資が減り不動産系投資に猛烈に偏っているからバブルと破裂を繰り返す諸悪の根源になっている、という指摘はなるほどと。都市部の地価高騰は都市効果みたいなことかと思ってたけど、金融システム上の理由もあるというのは学び。2019/07/26

Hiroo Shimoda

1
金融緩和で銀行に資金供給しても、社会的に無益な貸出(具体的には不動産投資資金)が増えるだけと。この前提のもと、需要不足への対処法としていわゆるヘリコプターマネーを提言する。論理的ではある。2017/02/26

Curus Persia

1
 「ヘリコプターマネーは世界を救うのか?」との副題に釣れられ読みました。ヘリコプターマネーとは、政府が紙幣を印刷してヘリコプターからばらまいいて、それを拾った国民が商品を買えば景気が回復する、とする話だと 私は思っていました。本書の中では、政府債務をチャラにする方法の様です。まあこの話は少し以下出てきません。全体的に、金融機関の規制を強化しなさい、とする主張の本です。本書の解説は、日本銀行の元理事早川英雄さんが書いています。大変にわかりやすい解説です。  翻訳はこなれた日本語で読みやすいです。2017/02/25

chiro

0
英国の金融の責任者として、実務にあたっていた著者によるマネタリーファイナンスの勧め。著者の主張にある民間信用創造に対する不信は現象としては、正しいところもあるが、これを規制する事による需要創造への影響は検討の余地があると思う。しかしながら、リーマンショックの原因やその後の対応を省みた時には著者の主張には耳を傾ける価値は十分にあると感じた。2020/06/16

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