出版社内容情報
身心変容技法研究は、
京都大学名誉教授の鎌田東二氏を研究代表者として、
「心の荒廃」が社会問題となり、未来のグランドデザインは描けない現代に向けて、
2011年にはじめられた科研費による研究である。
身心変容技法とは、
「身体と心の状態を当事者にとって望ましいと考えられる理想的な状態に切り替え、
変容・転換させる知と技法」
であり、古来、宗教や芸術、武道、芸能など諸領域で編み出されてきた。
研究は、この時代状況から抜け出ていくための宗教的リソースないしワザ(技術と知恵)として、
この「身心変容技法」に着目。
具体的には、
・神秘思想における観想
・仏教における止観や禅や密教の瞑想
・修験道の奥駆けや峰入り、滝行
・合気道や気功や太極拳
などの各種武道・芸道等々があり、
それらさまざまな「身心変容技法」の諸相(特色)と構造(文法)と可能性(応用性)を、
文献研究・フィールド研究・実験研究・臨床研究の手法により総合的に解明する。
そして現代を生きる個人が、
自分に合ったワザを見出し、活力を掘り起こしながら、
リアルな社会的現実を生き抜いていくことに資する研究成果を
社会発信することを目的としている。
この「身心変容技法シリーズ」は、それら研究の成果を、
専門家、研究者の枠を超えて、より多くの読者に届けるべく、企画された。
●心と身体の変容の伝統、技術、価値を現在の私たちの生き方に生かしていくこと。
●身心変容技法というものが、個人の在り方を根本的に変容する可能性を持つもので、
新しい生き方を考える現在に必要な学びであること。
●現在が、新しい生き方の要請される人類史的な転換点にあることにあり、そのヒントとなること。
これらの問題意識が、身心変容技法シリーズにまとめられた学問研究には通底している。
本巻では、新型コロナウィルスの感染拡大で苦しんでいるさなか、
医療や癒し、臨床にかかわるさまざまなヒントを提供する論考を集めた。
瞑想の科学と、身心変容技法の事例研究の両面を含み、
それらを臨床的に統合、総合しようという試みである。
本書を通して、生きる力の源泉に触れ、生の指針を得ていただければ幸いである。
目次
序章 身心変容と生業と医療―なりわい・わざわい・さちわいの交叉点
第1章 マインドフルネスと統合医療
第2章 多様な医療における身心変容技法
第3章 心理療法と精神医学と神経科学
第4章 音楽・知覚・演技と身心変容技法
第5章 芸能とシャーマニズム
終章 社会の健康と医療
著者等紹介
鎌田東二[カマタトウジ]
京都大学名誉教授。上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授、同大学グリーフケア研究所所員。放送大学客員教授。1951年徳島県生まれ。國學院大學文学部哲学科卒。同大学院神道学専攻博士課程単位取得満期退学。岡山大学大学院医歯学総合研究科社会環境生命科学専攻単位取得退学。博士(文学、筑波大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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