出版社内容情報
編集&解説
宇佐見英治
清水茂
河原忠彦
村上光彦
長谷川四郎
山口三夫
佐々本斐夫
森本達雄
青本やよひ
解説
宇佐見英治 ほか
底本
みすず書房版(昭和46~47年刊)
体裁
A5判・上製布装・各巻平均280頁
日本人の心に深い慰めと安らぎをあたえる詩人哲学者の名著!
片山敏彦生誕百年記念出版
著者没後10年目に親しい人たちの手で編まれた唯一の著作集。
生誕百年を記念し待望の復刻!
各巻の編者が入念な解説を付して、ユニークな「詩人哲学者」の全貌を多面的に紹介している。
反戦の意志を貫き、戦後世代にロランやヘッセの世界を伝えた片山敏彦の生涯の精華を網羅。
〈片山敏彦著作集〉全10巻は、それぞれ別の編者が受持ち、主題ごとに編集した選集だが、ほぼ精髄を網羅しているので全集といってもよい。
宇佐見英治
片山敏彦ほど深く西欧の精神世界に参入して、その中核を日本人に伝えた文学者はいない。
村上光彦
全巻収録内容
第1巻
詩篇
〈編集・解説〉宇佐見英治(明治大学名誉教授)
自家版として昭和4年と19年に刊行された二つの詩集『朝の林』と『暁の泉』に、昭和8年に出版された『片山敏彦詩集』などから戦後の詩を加えて集成。昭和36年の『片山敏彦遺稿』の詩も収める。第2巻
ロマン・ロラン
〈編集・解説〉清水茂(早稲田大学教授)
「ロマン・ロランとは誰か?」を考究することは、今後の人類にとっての課題である。
ロランの生涯と仕事を系統的に研究した名著。
「限りなく人間的なるもの」「ヴィラ・オルガの思い出」ほか併載。
第3巻
ドイツ詩篇
〈編集・解説〉河原忠彦(東京大学名誉教授)
この本の特色は、ゲーテ、ハイネから現代にいたる「数多くのドイツ詩編の中から、自らの感受性にそくして選び出されたその選択の適確さと、詩編に加えられたユニークな解説にある」(本書解説)
第4巻
橄檻のそよぎ
〈編集・解説〉村上光彦(成蹊大学名誉教授)
詩論/詩人論1
文学と象徴/詩心について/詩と生活/詩と神秘精神/ボードレールとユゴー/宿命と雅愛/マルセル・マルチネ論/友愛の詩人/詩と思索/ガブリエラ・ミストラル/橄檻のそよぎ/タゴール論(ほか)第5巻
さまよえる客
〈編集・解説〉長谷川四郎(作家)
詩論・詩人論2
ゲーテと共に/シラーの形姿/ヘルダーリン(頌、さまよえる客)/ヴァーグナーの文学/リルケの思想/若きヘルマン・ヘッセの二元/魂の贈りもの/カロッサの詩/人間性の苦闘の世代(ほか)
第6巻
青空の眼
〈編集・解説〉山口三夫(フランス文学者)
芸術論集
詩の心/諸芸術の照応/秩序と照応/クレエの絵画論/印象派/ボナール/ルドン/ベートーヴェン 九つの交響曲/パッハの一幻影/回想と音楽/青空の眼/音楽の精神性/歓喜の方へ(ほか)
第7巻
照応
〈編集・解説〉佐々木斐夫(成蹊大学名誉教授)
比較文学・比較文化論
照応/象徴性の賭け/様式への愛/遠来の客/心ゲーテと鴎外/鴎外とリルケ/利玄とリルケ/芭蕉/クルチウス論/優しく強き母性/回想と展望 マルヴィーダとベルタ・シュライヘア(ほか)
第8巻
雲の旅
〈編集・解説〉森本達雄(名城大学教授) 散文詩・回想
雲の旅/村里日記/四季断想/秋の素描性/高原の記/青い雲/夢/里の花の種/冬の光の中で/追憶の庭/フランスヘの回想/蓼科高原/永遠に母なるもの/魂のよろこび/信じること(ほか)
第9巻
自分に言う言葉
〈編集・解説〉青木やよひ(評論家)
日記抄
青年時代(1918年~)/ヨーロッパにて(1929年~)/戦争前後(1931年~)/再び荻窪にて(1948年~1961年)内面的な日記風ノートと原稿を整理編集したもの。
年譜を付す。
第10巻
書簡集
〈編集・解説〉著作集編集部
青春時代から晩年まで、友人や親しい人たちに書き送った書簡類から328通を収める。
うち45通は、ドイツの女友だちベルタ・シュライヘアとの三十年余にわたる友情をしるす(南大路振一訳)。
野の花のように明るくすがすがしい片山敏彦の世界。
純粋にして高雅な魂の音色は、人びとの心を洗う。
片山敏彦
略年譜
1898~1961年
詩人/独仏文学者
明治31年11月5日、高知市の医師の家に生まれる。
大正13年に東大独文科卒業、法政大予科教授となる。
昭和4年渡欧、ロマン・ロランやアベイ派の詩人たちと交わる。
この頃、ロランの『愛と死との戯れ』などを翻訳し築地小劇場が上演(昭和2年)、処女詩集『朝の林』を出版(昭和4年)。
昭和7年から20年まで一高教授。
その間、『ロマン・ロラン』(昭和12年)『心の遍歴』(昭和17年)『詩と友情』『ドイツ詩集』(昭和18年)を出版・戦後は、ロマン・ロラン全集などの翻訳と著作に専念。
『詩心の風光』(昭和21年)『詩と文化』(昭和22年)『雲の旅』(昭和24年)などを遺して、昭和36年没。
香り高い名著の精髄は、本著作集にジャンル別に編み直され、収録された。
推薦のことば
名著の復活
大岡信(詩人)
敗戦直後古本屋で見つけた『ドイツ詩集』は、私の中学、高等学校時代の最も大切な本のひとつであった。
自分に理解できる範囲で、私はくりかえしこの本を読んだ。
名著だと信じた。
久しぶりに読みかえして、名著の印象は変らなかった。
それに、ナチス狂いの戦争中に書かれながら、完全にそういう風潮を黙殺し、ひたすら自分の詩的活眼によって古今のドイツ詩の詞華集を編み、詩史を書いているのに敬服した。
評論集『詩と文化』も愛読したが、戦後まもないころの雑誌「世界文学」その他で読む片山氏のエッセーには、多くの知的・感性的刺激を受けた。
クレー論などの美術論も注意して読んだものである。
片山氏の詩魂は、つねに「清澄(セレニテ)」をめざした。
生涯の詩篇、わけても最晩年の遺稿詩にそれを見ることができる。
時代が今やそのような世界から激しく遠ざかっているからこそ、そこには顧るべき多くのものがあることを思う。
名著がたくみに集成された『片山敏彦著作集』の復刻は朗報だ。
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