出版社内容情報
『春と修羅』の初刊は大正13年4月関根書店より刊行。「無声慟哭」をはじめ名詩の数々は現代に於ても高い人気を誇っています。
内容説明
賢治文学の魅力の結晶。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
101
全部はとても読みきれない。何故か……言葉と漢字を辞書で引く回数が多すぎる。表題の「春と修羅」だけ読むのに漢和辞典1回、大辞泉5回。情景を思い浮かべ(難儀)ながら朗読することに5回。それでももう少し分かりたくて筆ペンで書き写す。ー砕ける雲の眼路をかぎり れいらうの天の海には 聖玻璃の風がいきかふー 流れるような言葉で心象を描く。前出の「糸杉」がZYPRESSENというドイツ語で印象的。残念ながらここからは恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』にあるコンクールの課題曲「春と修羅」は聴こえてこなかった。修行が足りない。2017/02/03
NAO
72
「丘の幻惑」「雲の信号」「芝生」「青い槍の葉」「永訣の朝」など詩として心に残る作品もあるが、賢治の童話の中から切り取られたのかとも思えるような賢治独特のイメージが無限に広がっていくような作品が多く、確かにこれは詩ではなく、心象スケッチなのだなと思う。スケッチとはいうが、賢治の作品は、そこから浮かび上がる映像の美しさだけでなくそこに響いている音も印象的だから、読む者は、身を澄ませて、全身でそれらを感じ取らなければならない。2018/09/18
更紗蝦
29
科学技術と宇宙への憧れ、植物への愛着、メルヘンチックな世界観の中に漂う不穏な空気、死後の魂の捉え方などに、なんとなくサン=テグジュペリの『星の王子さま』と通ずるものがあるように感じましたが、『星の王子さま』が暴力性というものを「外向きの加害」(支配・侵略)と捉えて明確に批判しているのに対し、『春と修羅』は「自分の内面にくすぶっているもの」として捉えて「他者を加害(支配・侵略)したい欲望」とは完全に切り離し、「善悪の問題ではなく必然的に存在するもの」として扱っているように思いました。2020/07/07
マカロニ マカロン
17
個人の感想です:B。『蜜蜂と遠雷』(恩田陸)のなかでコンクールの課題曲として「春と修羅」が出てくる。日本人の作曲家が作り、そのカデンツァの部分をコンテスタントが自由に作ってよいという設定。心象スケッチという副題(?)がついているが、外国語の単語や意味不明なカタカナ語、今ではほとんど使われない日本語も多く、なかなか意味がつかめない。しかし、繰り返し出てくる、雪、雲、森、岩(石)などを想像しながら声に出して読み進むと、どんよりとした岩手の雪空が心に浮かんできた。そして、なんとも心地よいテンポだった。2017/06/19
おゆき
13
宮沢賢治が1922〜23年に制作した詩を時系列にまとめた第一集。唯一、生前の刊行。「わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です」から始まる序文から惹き込まれます。 森や雪や光など自然に対する感覚が細やかで柔らかい。 妹の死の淵をうたった「永訣の朝」後、作風が変わる。妹の生と死について感傷に浸る詩を多く残している。カムパネルラの雛形を感じました。第二集以降も、いずれ読んでいきたいです。2024/05/06