内容説明
日本人が知らない性悪説の教科書。秦の始皇帝が著者に会えたら「死んでもいい」と感動して天下統一に用いた思想。中国哲学史研究の泰斗による読みやすい訳文と豊富な解説。
目次
しらみの悟り
伯楽の教え
隣人の言い分
中行文子の明察
あらぬ疑い
よけいなお世話
目先の利に目がくらむ
子を知るは親にしかず
君主のありかた
己を知る道〔ほか〕
著者等紹介
加地伸行[カジノブユキ]
昭和35年、京都大学文学部卒業。高野山大学・名古屋大学・大阪大学・同志社大学・立命館大学を歴任。現在、大阪大学名誉教授。文学博士。中国哲学史・中国古典学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小木ハム
9
韓非子の現代語訳&解説本。人間の根本は利己であり、複数いる状態で放置するとカオスに向かい崩壊するので法律・罰則を用いて秩序を保てということ。これはマキャベリの君主論やホッブズのリヴァイアサンにも通じるのではないでしょうか。問題は、私欲に溺れた悪人(社鼠)が法律を作ったり、私情で法を適用したりしなかったりユルユルに運用すること。居眠りした王様に「風邪を引かないように」冠係の人が衣を着せてあげたら、起きた王様が一瞬喜ぶんだけど「越権行為だ」として罰を与えた話が示唆深い。とはいえ、人の善性を諦めたくはないですね2023/02/17
undine
1
法家思想を完成させた人物。韓非の思想は君主が国を治めるために法に基づくべきだということ。人間の本質は利己的であり、道徳よりも法と利益によって統治することを唱えた。孔子が唱える徳治を批判している。一貫しているのは、上からの統治という観点に立って、どちらが良いのかを論じていること。主権は君主にあり、主権在民ではない。法治主義は現代社会に合っていると考えるが、今の社会に韓非子の考えを持ち込む時には気をつけるべき。2023/05/20
in medio tutissimus ibis.
1
修身斉家治国平天下式の儒教道徳主義を超え、人間の利己主義を前提に社会をデザインする青写真を描いたのが韓非子の歴史的意義である。成文法と権謀術数により君子が臣下を管理すべしというのがその骨子である。若さに任せた仕事であって、これでは君主は猜疑心を膨らませ続け、限界まで仕事を増やし続けるほかにない。隠遁無き老荘思想の様な絶望的な厭世感がある。受けの悪さの一因であろう。あるいは神の見えざる手の如き楽天的な君臣の共生を説くことができていれば、秦王は安んじて彼を用い、以後の中国史も違ったものだったかもしれないと思う2023/04/25
やま
1
納得は出来るし、そうだろうとも思う。 だけどやっぱり受け入れ難いのは、後世の人々の評価に同じ。 人、動物は本来利己主義、と言うのは説得力ある。2022/09/27
starlive
0
人は悪いことをするものという前提条件に対して、どうコントロールしていくか(術)、極端であったり乱暴であったりする部分もあるが、唸らせる部分もある。 工学のフェールセーフの考え方にも通じる。2024/10/03