内容説明
誰も他人と同じようには働けない。人間を部品と化す規律化。それに抗する可能性を、戦後の「主婦」や「障がい者」の運動に探る。労働とは何か、ジェンダーの視点で問い直す。
目次
序章 規律化の二面性と「普遍主義」
第1章 近代社会と公私の分離―規律化・ジェンダー・「普遍主義」
第2章 戦時下の生活統制と産業報国運動の展開―国家社会主義と規律化
第3章 一九五〇年代における横浜生協の生活文化活動―規律化に抗する「主婦」の運動
第4章 一九七〇年における胎児性水俣病患者の運動―規律化されない身体と新しい共同性
終章 主体性の回復と新しい共同性
著者等紹介
及川英二郎[オイカワエイジロウ]
東京学芸大学教育学部教授。1967年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程学修退学。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
有智 麻耶
0
近代の資本主義社会において、公私の分離が男女の区別と対応させられることによって、女性に「男と同じように働け/さもなければ女は家にいろ」という恫喝が強要される。また、規律化の作用によって、人間は「服従」して部品になるとともに「主体性」を獲得する。したがって、ただ性の多様性を主張することは、多様な部品として服従するだけの道へと通じている。重要なのは、規律化の成果である人間の主体的な意志の力によって、「新しい共同性」を編み直す可能性を探ることである。著者は、それを歴史学的に論じていく。2023/02/21