内容説明
本書が従来の産直研究の成果と異なる特徴は次の点である。第1に、産直流通の事業や評価に影響する要素の1つである産直の定義や概念を発生史的に分析し、過去の主要な研究成果に対して批判的な検討を加えたことである。その際、農産物の使用価値をめぐる生産者、消費者、商業資本それぞれの評価の相違とその根拠を検討し、これを手掛かりにして産直流通の特質を基礎理論的に検討した。第2は、産直流通の諸形態を直接交換型から順に複雑な形態へと踏査し、協同組合型産直の弱点を克服するものとして、農事組合法人型産直の可能性と力量に着目して、その実態を実証的に分析した。第3は産直流通における数量調整、品揃え、価格形成などの主要な流通課題を取り上げて、生産者側の一方的なリスク負担の機構を実証的に明らかにした。今後は消費者側も需給調整対策として、価格保障基金の造成や計画的消費の推進など一定の負担が必要なことを指摘した。
目次
第1章 課題と方法
第2章 産直論の系譜と産直の意義
第3章 産直の諸形態と存立条件
第4章 産直流通における主要課題
第5章 これからの産直流通