感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
UK
25
米国でリンチにあった黒人と十字架にかけられたイエスは本質的に同じもの、という論旨。利己的な遺伝子論から言えば、異分子を排除し、近しい遺伝子を守る行動という点ではまさにその通り。さらに言えば、宗教も遺伝子と同質の働きをする。イエスの汝の敵を愛せ、という教えは利己的な遺伝子とキリスト教自身をも含む宗教に対する真っ向からの挑戦である。卓越した宗教家、芸術家、科学者、そして真に苦難を乗り越えようとするものだけがこの呪縛を超えて歴史を変えていく。現代のイエスとも言えるキングの言動には心を揺さぶられずにはいられない。2014/09/05
ころりん
2
2021年一冊目 「リンチの木」に吊られた何千もの黒人は繰り返し十字架につけられたイエスであった(帯より) ショッキングな言明だけど、黒人リンチのショックと、それを黙殺・正当化してきた白人キリスト者という匹敵するショックに、不感症でなんていられない。 「人々が自分自身であろうとしないで、誰か別の者になろうとする時、それが完全な絶望である」(55頁) 十字架はイエスのリンチであり、リンチの木はイエスによって絶望で終わらず、正義の告訴となる。 訳者あとがきが、日本人としての読後感を代弁してくれた。 今もなお…2021/01/13