内容説明
明治・昭和・平成の大合併でなぜその地名を選択したのか?―見やすい豊富な地形図から、地名に隠された歴史を読み解く。
目次
合成と「めでたさ」で創作
山と川、それに観光と名産
いろいろ事情がありまして
東西南北中新といえば
歴史的地名リバイバル
市町村名とその都合
著者等紹介
今尾恵介[イマオケイスケ]
1959年生まれ。横浜市出身。明治大学文学部ドイツ文学専攻中退後、出版社勤務を経て1991年よりフリーライターとして地図・地名・鉄道の分野で執筆活動を開始。2017年に『地図マニア 空想の旅』で斎藤茂太賞(日本旅行作家協会)、2020年には日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞。現在、(一財)日本地図センター客員研究員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査、深田地質研究所ジオ鉄普及委員会委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tomi
33
明治の大合併、昭和の大合併、平成の大合併。私の住む町もその全部で合併を経験して、その度に名称が変わりました。市町村合併は利害が絡むので名称で揉めるのは当然ですが、そのために歴史的な地名が失われてゆくのは残念でならないし、少なくとも他所の人間が混乱しない名称にしてもらいたいものです。地名研究の第一人者の著者も「歴史的地名が将来にわたって引き継がれていくこと」が重要という主張。様々な名づけの経緯が分かりやすく書かれていて、かつて市町村以外の呼び名があった、などの地名トリビアも面白い。2021/11/26
雲をみるひと
22
市町村名にまつわるトピックを纏めたコラム集のような形態で、その内容の詳細さからトリビア集的な要素もある一冊。抽出しているトピックが興味深いものが多く解説文もわかりやすい。さほどマニアックな内容もないので地名や自治体の統廃合の変遷に興味がなくても楽しめると思う。2021/04/30
六点
9
日本の市町村は明治・昭和・平成の大合併で大量絶滅を繰り返してきた。柳田國男が言った「村長と、戸籍係兼兵事係と小使いしか居ない役場」から自治を行う主体に相応しい規模を求めて合併を繰り返したきた。この百年、安易な瑞祥地名や合成地名、地名の階層性を無視した誇大地名などが全国各地に満ち溢れた。「主邑の地名を」と言う著者の意見も理解できるが、「合併協議会開催、初手宇治市長「市名は当然宇治市で」後手「全市町協議会離脱」流局となりました」と言うことが地元で起きたので、合併を至上命令にしたら妥協しか無いんですよね。2020/12/13
ぷるぷる
7
結論としては地域の名前は場所や時代の事情によってそれぞれ違うということ。筆者が言うように昔からの名前は存続させて欲しいものだと思いました。中央省庁は一意普遍にしたいんでしょうけど行政の効率化も経済貢献についても良いことなんて無さそうだしそもそも無理でしょ。中身は地名に関する発見の山で、そうだったのかという気づきばかりです。合併の際には元の名前を残そうと奮闘することもあれば、有名な地名が欲しくて重なっちゃうこともあるのが可笑しいです。総括らしきものもなく、ただひたすら事例紹介に徹する作りが清々しいです。2021/07/04
tkmt
5
市区町村名の変遷について。市町村の名前には歴史が込められており、自然からつけた地名や、出来事が怒った地名、合併の経緯から折衷案として誕生した地名などがある。地理オタクは平成の大合併で生まれた地名を敵視しがちであり、自分もそうであるが、それはそれで『観光重視』『対等合併での苦肉の策』といった現代の情勢を反映した歴史資料として後世に残っていく良いものなのかもしれない。2021/07/10
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