内容説明
芥川賞受賞作家、初のエッセイ集。
目次
1 『点と線』の謎(見切り発車)
2 司馬遼太郎記念館(泥棒の力;遠い読者;悪魔たちの哄笑;テレビの前で。)
3 小さな旗
4 芥川賞を受賞して 組織と個人
著者等紹介
田中慎弥[タナカシンヤ]
1972年、山口県下関市生まれ。下関中央工業高校卒。2005年「冷たい水の羊」で新潮新人賞を受けデビュー。07年、「図書準備室」で初めて芥川賞候補に。08年に短編「蛹」で川端康成文学賞、短編集「切れた鎖」で三島由紀夫賞受賞。同作は芥川賞候補にも選ばれた。09年に「神様のいない日本シリーズ」、11年に『第三紀層の魚』が芥川賞候補になり、12年1月に「共喰い」で第146回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
81
純文学らしさの感じられるエッセイでした。大部分が旅にまつわる話で占められていますが、宿泊先のことより風景が主なのには、田中さんが「見る」作家であるような気を起こさせます。論理的であるようで旋回している文章は小説とも共通していますが、この作家の書く文章が好みだと改めて再認識しました。2017/07/27
国士舘大学そっくりおじさん・寺
32
受賞会見で話題になった芥川賞作家・田中慎弥のエッセイ集。西日本新聞社から出ているこの本は、同紙で連載された紀行文や地元山口の朝日新聞に連載されたものに、文芸誌に載せた数篇で構成。電車に乗って福岡の町を訪ねる連載は、さほど面白くないのにズルズル読んでしまう。司馬遼太郎記念館を訪れたエッセイが面白い。松本清張の話題もよく出る。朝日山口版連載のエッセイが一番好きだった。あの記者会見で感じた通りの人となりを感じた。徒党を組まず孤高に立つその姿勢には好感を持った。この人の小説をいつか読みたい。2014/05/19
こうすけ
23
田中慎弥のエッセイ集。ぶらり途中下車的な連作はちょっと企画ミスな気がするが、小説について語っている文章がとても良かった。文学賞受賞の裏側の話も面白い。もっとエッセイも書いてほしい。2022/07/19
阿呆った(旧・ことうら)
22
『共喰い』で芥川賞を取られた田中慎弥さんのエッセイ◾︎松本清張の『点と線』の舞台に行ったり、思い出話をしたりしています。『読書が教養として定着していた時代は高度経済成長とともに終わったのだから、筆1本で生きていくのは非常に難しい。…私は他の仕事をする気がないので、水準が下がれば、冗談抜きで小説ではなく遺書を書くハメになる。』そうだよなあ。田中さんアルバイトすら仕事したことないらしいし。。2015/12/22
3939タスタク
12
自らが持つ『点と線』の落丁部分の検証を自らが足を運び行う、云わば『田中慎弥的ぶらり途中下車の旅』から始まるエッセイだが、私と同世代でありながら物書きとしての生き様や苦悩や考え方は、良い意味で古いタイプの作家なのでは。 『あの発言』が独り歩きしたため、彼自身に嫌悪感を持つ人も少なくは無いだろう。しかし、真摯なまでに作品と向き合う彼に、かつての文豪達と同じような覚悟を感じ、どのような作家になっていくのか期待したい。2012/06/03