内容説明
プロセス思想の課題は、複雑な多次元的構造の進展のプロセスをどう理解するかである。一つのプロセスを生きている以上、プロセスの中からプロセスを論ずることになり、プロセスの全貌を客観的に直視することは理論的にできない。自己言及性を克服しつつ全体への展望を開くために、ホワイトヘッドは知覚の生起を標準にしてactual occasionという仮説を立て、ocean of feelingという隠喩に頼っている。彼のpropositionの概念は隠喩そのものを一般化したものである。本書ではホワイトヘッドの構想力の産物に批判的な目を向けながらも、そこにおいて展開されている多次元的なプロセス論に、現代思想のさまざまな観点から、分析をほどこし、今日の哲学的アポリアに解決を与えうる可能性を探る一方、プロセス形而上学の延長上にあるプロセス神学を、キリスト教や仏教との関わりにおいて再吟味し、文明論、倫理学、教育学、社会学、美学に関する斬新な提言を可能にする議論を展開した。
目次
ホワイトヘッド形而上学における意識の場と主体
「過程」と「場の開け」の問題―ホワイトヘッドと実存哲学を介して
コスモロジーの可能性
物と言葉―ホワイトヘッドとメルロ=ポンティ
ホワイトヘッドとベルクソンにおける限定の原理―「開削」概念を中心として
ホワイトヘッドの視点からの西田哲学の解釈の試み
ホワイトヘッドとアメリカ・プロセス神学―東洋的視点よりの批判的理解と提言
バルト神学とホワイトヘッド哲学についての結論的考察〔ほか〕