出版社内容情報
中国ナショナリズムの実像――。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。
内容説明
中国ナショナリズムの実像。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。
目次
序章 ナショナリズム研究と対日ボイコット運動
第1章 第二辰丸事件とその地域的背景
第2章 東南アジア華僑による民国初年の対日ボイコット
第3章 懐疑される愛国心―中華民国四年の排日運動をめぐって
第4章 五四運動における暴力と正義
第5章 上海五四運動における工界の位置
第6章 旅順・大連回収運動
第7章 五四と五卅のあいだ
終章 ボイコット運動の歴史的位相
著者等紹介
吉澤誠一郎[ヨシザワセイイチロウ]
1968年群馬県に生まれる。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とんこつ
8
近代以降、中国や華僑の多く住む東南アジア各国では、何度か排日運動が起きた。これまでそれは愛国心の発露という説明で片付けられてきた節があるが、本当にそうなのだろうかというのが本書の投げかける問いだ。一口に排日運動といっても、時代や地域ごとに抱えている経済構造や治安状況は多様で、そのインセンティブも自ずと異なる。興味深いのは、五四運動の特異性として、筆者が暴力に着目したこと。それまで平和裏に行われてきた排斥運動とは一線を画すその暴力が、しかし、近代中国の変革に大きな影響を与えたという事実は示唆的だと感じた。2022/03/06