内容説明
統計はなぜ科学的な根拠になるのか。実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも必要不可欠である統計学・データサイエンスを、科学的認識論として捉え直し、帰納推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにする。科学と哲学を架橋する待望の書。
目次
序章 統計学を哲学する?
第1章 現代統計学のパラダイム
第2章 ベイズ統計
第3章 古典統計
第4章 モデル選択と深層学習
第5章 因果推論
終章 統計学の存在論・意味論・認識論
著者等紹介
大塚淳[オオツカジュン]
1979年生まれ。2008年京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。2011年京都大学博士(文学)取得。2014年インディアナ大学修士(応用統計学)、同大学博士(科学史・科学哲学)取得。現在、京都大学大学院文学研究科准教授、理化学研究所AIP客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月をみるもの
13
”帰無仮説をたてるということは、可能世界を構築すること。検定は、その可能世界が「この」世界とどれくらい重なっているかの評価” という解釈でいいのかな? 業界の標準手順に盲目的に従ってれば、それで「科学」してるんだ、、という思い込みを克服するのは難しいが、なにかというと「検定やってp 値出せ」と言ってくる能無しの査読者たちにぜひ読んでもらいたい。2020/12/27
キョートマン
9
難しいけどとても面白かった。データサイエンスの哲学の側からの視点!2022/04/27
Iwata Kentaro
9
とてもおもしろかった。が、読むのにめちゃ時間がかかった。また再読せねば。統計学と哲学は相性がよい。存在論、意味論、認識論を興味深く読んだ。郡司ペギオ幸夫先生の議論にもつながった。2022/03/06
阿蘇の史(さかん)
9
めちゃくちゃ面白かった.今まで曖昧にしか理解していなかったことをクリアに整理できた気がする.推測統計としてのBayes統計が,科学哲学のconfirmation theoryにおけるBayes主義とは別物だと認識できたし,古典統計を認識論における信頼性主義と結び付ける説明も非常に明快.何よりAIC(赤池情報量規準)をDennettのリアル・パターンの理論と関連付ける議論が私にとって収穫だった.各テーマについてもっと本格的に勉強するモチベーションができた.★★★★★2020/11/29
富士さん
8
統計学に感じていたもやもやに応えてくれる内容でした。特に、推測統計の「答えがはじめに分かっている感じ」がどうも気持ち悪かったのですが、それは決してとんちんかんな感覚ではなかったのだと知れて、とても心強く感じました。統計にかけた結果、そこに何らかの傾向があると考えるには、何を正しいとするかという前提を共有しておかなけれなならず、あくまでも文化的な構築物であるということです。科学は何でもそうですが、あくまでも可能性を基にした目安として有効なのであって、不動な真理を示すものではないことは肝に銘じるべきでしょう。2022/03/11