内容説明
18歳の女性が誘拐・殺害された「三面記事」事件。だが、大規模な捜査と政治の介入によって、それはスキャンダラスな国家的事件となった。作者=歴史家は自ら調査を進め、被害者の生の物語を語り始める。そこから明らかになる「真実」とは―。メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞作。
目次
ジェシカ
不在現場
カッターを突きつけられた母子
ル・カスポ
隅っこのパパ
「一縷の望み」
言葉なき子供時代
誘拐致死
判事の前の二人の少女
特別な一日〔ほか〕
著者等紹介
ジャブロンカ,イヴァン[ジャブロンカ,イヴァン] [Jablonka,Ivan]
1973年生まれの歴史家・作家。現在、パリ第13大学教授。『私にはいなかった祖父母の歴史』(2012年)によりギゾー賞、オーギュスタン・ティエリ賞、歴史書元老院賞を受賞。『歴史家と少女殺人事件―レティシアの物語』(2016年)は文学的な観点からも高く評価され、メディシス賞、ル・モンド文学賞を受賞
真野倫平[マノリンペイ]
1965年、名古屋市に生まれる。パリ第8大学博士課程修了(文学博士)。現在、南山大学外国語学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
uniemo
13
フランスの18歳の女性に対する誘拐殺人事件を著名な歴史家である著者が被害者の生育歴、環境などを調査しスキャンダラスな報道により、死後もなお冒涜を受けているような被害者の人生に光を取り戻そうとするノンフィクション。被害者はDVの両親から福祉制度で逃れたはずの里親家庭でも確定ではないものの性的虐待を疑われる状況下におかれ、それでも青春を楽しもうとした矢先に殺されてしまいます。冷静な文章ですが福祉や教育といった社会制度の欠陥や大衆受けを狙う報道のモラル、事件の政治的利用など様々な問題について考えさせられました。2021/02/12
圓子
9
事実は小説より奇なり。そこいらに転がっている、ミステリーやサスペンスにくらべて、よほど「面白か」ったこと。面白いからこそ、歴史叙述の不完全さをより一層実感してしまうこと。扱う時間が近いので、欠けているパーツがはっきりわかってしまう。歴史家って何者なんだろう?と胡散臭く思っている人には、その正体を掴む手がかりになるかも。かなり特殊だけど。たとえ話のわかりやすさがある。いやどうかな。余計に胡散臭く思われてしまうかな。2020/07/24
いとう・しんご singoito2
8
ジョブロンカの第2弾。内容は他のレヴューに詳しいのでパス。原題は” Laëtitia ou La fin des hommes”。さて、la finは何を意味するのか、「終わり」?「目標」?。歴史は常に過去を、la finとなった出来事を追求し、語ろうとする・・・では、そこに未来を窺い見る余地があるとすれば、それはいくら追求しても見いだせない、歴史には語ることの出来ない謎=暗黒の中でしかない・・・それはプラトンの対話編のように神話、物語に飛躍することでしか見いだせない答え、光りなのか・・・2025/01/17
黒とかげ
2
うーん。あんまり好きなタイプの本ではなかった。マスコミのバイアスを批判しながら、作者自身にも思いっきりバイアスがかかっている。物語としても構成がわかりずらい。学者が自分の意見を述べた本と考えるのが良いだろうか。2020/08/04
takao
1
メタ調査。パリ大学の教授。2021/02/09