内容説明
現代人が陥った精神的苦境の根本にあるものとは何か。「生きる意味」や「自分らしさ」の探求、スピリチュアルなものの流行は、「世俗化」といかに関係するのか。壮大な歴史的展望のもとに宗教・思想・哲学の曲折に満ちた展開を描き出す記念碑的大著、ついに邦訳。
目次
第4部 世俗化の物語(動員の時代;本来性の時代;今日の宗教)
第5部 信仰の条件(内在的枠組み;交差圧力;ディレンマ1;ディレンマ2;近代の不穏な前線;回心)
エピローグ 数多くの物語
著者等紹介
テイラー,チャールズ[テイラー,チャールズ] [Taylor,Charles]
1931年、カナダ生まれ。オックスフォード大学にて博士号(哲学)取得。マギル大学などで教鞭をとり、現在、同大学名誉教授。政治哲学をはじめ、自己論・道徳論・言語論・宗教論などの分野において研究を積み重ねてきた哲学者であり、テンプルトン賞、京都賞などを受賞
千葉眞[チバシン]
1949年生まれ。プリンストン神学大学にてPh.D.(政治倫理学)取得。国際基督教大学教養学部教授・特任教授を経て、同大学名誉教授、平和研究所顧問(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てれまこし
9
下巻では、上巻で語られた修正主義的な歴史に鑑み今日と明日の宗教のあり方が見直されてる。理性の覚醒によって迷信の体系としての宗教が後退していくという「引き算の物語」が否定されると、今日の状況も大いに違って見える。超越的存在を否定する内在的枠組みに道徳的意味を与えた排他的人間主義も、宗教が解決しようとした問題を解決していない。それどころか内在的枠組みの陣営でも粗野や科学主義とニーチェのような反人間主義といったように分裂が起きてる。宗教はそのようなアプローチの一つに過ぎなくなったが、それでもまだ生きて働いてる。2024/06/02
砂糖 翠
3
一辺倒な世俗理論への批判の枢要な点である、人間の開花繫栄のみに焦点を当てる排他的人間主義と理神論的キリスト教がどちらも人間の内面に着目し、コード化・規律化によって世俗化を進めたということが勉強になった。あとは現代にキリスト教、人間主義等々様々な立場が現われる中で、それらの関係を排他的に把握せずに、いくつかのディレンマ(生をより超えた繁栄と日常生活、暴力の可能性と対応)や超越性が失われていくなかでの不安といった交差圧力にそれぞれが対応している、というように論じた点も2021/04/15
takao
1
ふむ2025/03/21