内容説明
天皇の即位儀礼から、武家の始祖伝承まで。龍や狐、海人や童子、神仏や魔王が躍動し、神器や国土の由来を説く物語たち―。中世の権力は、自らの「正統」を示す数多の縁起説話によって支えられていた。即位法にまつわる宗教テクストや幸若舞などの芸能から豊かな王権神話の水脈を探る、永年の探究の到達点。
目次
中世王権神話テクストの諸位相
第1部 儀礼と王権―即位潅頂と即位法(宝珠と王権―中世王権と密教儀礼;慈円と王権―中世王権神話をうみだす主体;慈童の誕生―天台即位法の成立をめぐって)
第2部 芸能と王権―舞曲の世界から(辰狐と王権―『入鹿』の成立;海人と王権―『大織冠』の成立;八幡縁起の系譜―『百合若大臣』の世界から)
第3部 歴史と王権―変貌する日本紀(中世日本紀と王権―即位法と三種神器説をめぐって;日本紀の再創造―『春秋暦』から『秋津嶋物語』へ;魔王との契約―第六天魔王神話の文脈)
中世王権神話の水脈
著者等紹介
阿部泰郎[アベヤスロウ]
1953年横浜に生まれる。1981年大谷大学大学院文学研究科博士課程満期退学。名古屋大学大学院人文学研究科教授等を経て、龍谷大学文学部教授、名古屋大学名誉教授・高等研究院客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
48
中世において神話は独特の解釈を持っている。本書はその中世神話を王権との関係から論じた一冊。正直、東寺の舎利、穆王と慈童、鎌と鎌足や海中の珠、八幡神、三種の神器の解釈、そして第六天魔王との契約と魅力的な主題が多すぎる。以前『中世神話』を読んだ時は古代の神話の再解釈が多いように感じたのだが、本書を読むと慈童説話由来の法華経と王権の関係とか伊勢神宮に僧尼が入れない理由と第六天魔王等、独自の神話が生まれている事に気付かされる。中世というと闇を連想するけど、その闇が凝ったような神話群、教えられること多かったです。2021/02/16