内容説明
新たな学の創出。概念は、人類の幸福に深くかかわる人工物であり、概念工学とは、有用な概念を創造・改定する新しいフレームワークである。本書はその理論と実践展開を初めて提示し、豊饒な可能性を約束する。
目次
1 原理編(哲学の側からLet’s概念工学!;心理学の側からLet’s概念工学!)
2 実践編(心の概念を工学する;自由意志の概念を工学する;自己の概念を工学する)
3 展望編(心理学者によるまとめと今後に向けて;哲学者によるまめと今後に向けて)
著者等紹介
戸田山和久[トダヤマカズヒサ]
1989年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。現在、名古屋大学大学院情報学研究科教授
唐沢かおり[カラサワカオリ]
1992年UCLA Department of Psychology博士課程修了(Ph.D)、京都大学大学院文学研究科中途退学。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
センケイ (線形)
10
工学するからには取扱可能だという要請があるのだろう、概念を、多数の人の定義によってか現実との対応とによってか定式化する目論見はまさに知の営みというべき興奮に満ちたものだ。分野(名)自体を新規に起こそうということで、「分かる」という快刀乱麻を与えてくれるわけではないが、心理学と哲学とを越境しながらスイッチバック的に少しずつ定義、あるいは少なくとも実装可能な状態に寄せていくさまには、一定のスリルを感じることができる。概念や抽象名詞の定義につい頭を悩ませてしまうかたにはオススメしたい。2020/03/31
無重力蜜柑
4
「概念を公共財と見、社会や福祉向上の目的のためそれを改造していくこと」を第一目的としする哲学のあり方を「概念工学」と表現し、その第一歩を踏み出すために書かれた論文集。まず哲学者の戸田山と社会心理学者の唐沢が各学問から概念工学を解説、その後哲学者と心理学者各3名ずつによる「心」「自由意志」「自己」の概念工学の展望が語られ、最後に唐沢と戸田山による総括が行われる。自分が哲学に期待している役割、というか考え方が明晰に言語化されていて驚いた。ラトゥールのAN理論のアクターに「概念」を入れるという着想が良い。2021/07/18
gtndntnd
4
哲学を工学的に捉え直し、社会心理学と共同して、心理学の知見を踏まえ、心・自由意志・自己の概念のエンジニアリングを実践している。これらの概念をめぐる多数の知見が概念に影響を与えるさまに刺激を受けるとともに、素朴な概念理解や所与とされてきたものを反省的に解明するさまは衝撃的である。このような営みは哲学、心理学を超え、社会の様々な領域で大いに意味があると思う。哲学、心理学を学ぶ者だけだなく、科学、工学や法、倫理などを学ぶ者にも示唆に富むだろう。2020/02/07
なななん
4
自由意志の問題と概念工学との関わりは、とても勉強になった。逆に自己についてはいまいち掴みかねた。問題が入れ子になっているのはなんとなく理解できたが、そもそも自己なる概念の問題が掴みきれていないためだろう。2019/06/09
Akiro OUED
3
工学技術が世界を変えたように、概念工学は、概念で世界を変えようとする。やっと、哲学が現実に追いついた。すでに、自己は、現実空間と電脳空間で分岐してるし、嘘つきも約束破りも、政治空間では「よいこと」になった。富の分配とか環境正義とかのホットなテーマに、早速取り組んでほしい。2021/12/08
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